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「映像の世紀」制作秘史 寺園慎一

約30年続く大人気シリーズにこめられた「テレビ屋」の矜持/文・寺園慎一(NHKプロデューサー)

山荘で過ごすヒトラー(撮影 エヴァ・ブラウン) ©NHK

「長くやっているとこんなすばらしいこともあるんだなあ……」。私が担当している「映像の世紀バタフライエフェクト」が、第70回の菊池寛賞を受賞したという知らせを受け取った時に頭に浮かんだことだった。私は、1982年に入局し、40年以上、主にドキュメンタリー番組のディレクター、プロデューサーを続けてきた。ただただ目の前に積まれているVTRの山を編集し、台本を書いて、音をつけて、放送にこぎ着けるかということだけを考えているうちに40年も経ってしまったというのが実感である。

「映像の世紀バタフライエフェクト」は、2022年4月から毎週月曜日夜10時に放送している45分の番組である。「バタフライエフェクト」とは、本来は数学の理論などで使われる学術用語。同じ方程式に、ほんのわずかに違う数字を入れてみると、最終的には全く違う計算結果が生じる現象を指す言葉である。私たちの番組では、この言葉に「歴史の連鎖」という意味を込めている。

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