見出し画像

ジェレミー・デシルヴァ著 赤根洋子訳「直立二足歩行の人類史」 こんな面白い本には出会ったことがない 評者・角幡唯介

こんな面白い本には出会ったことがない

かつてヒマラヤの雪男捜索隊に参加したときに私の頭を悩ませたのは、もし未知のサルが見つかったらそれを雪男と呼ぶことはできるのかという問題だった。難しいだろう。なぜなら雪男と聞いてわれわれが思い浮かべるのは、もう少し人間に近い生き物だからだ。サルと雪男を分かつ境界、それは二足歩行をするかどうかだ、と私は考えた。

こんな奇妙な疑問をたずさえ、とある著名な人類学者を取材した。そして、目下のところ人類の二足歩行に関する最有力学説はラブジョイの仮説だとの話をうかがった。二足歩行になれば手が空く。手が自由になれば雄は雌に餌を運べるし、雌は赤子を抱いて移動できる。愛と子育てに立脚したのがこの仮説だ。

しかしそれから10年以上たち、あらたな学説が浮上しているようだ。それは人類の進化にたいするわれわれの固定観念を吹き飛ばすものだ。

ここから先は

754字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…

「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了しました。今後は「文藝春秋 電子版」https://bunshun.jp/bungeishunju をご利用ください