三浦佑之 『古事記』と五十五年
それほど暗くはない1年間の浪人生活を経て、志望校ではない大学に入学した。1966年のことだ。
落胆して鬱屈するなどということはなく、当時、よその大学では死者を出すほど過酷なシゴキで名を馳せていたワンダーフォーゲル部に入り、その年の夏には羅臼岳から岬まで1週間かけて知床半島を縦走するなどして、大学生活を大いに満喫していた。当然、本業のほうはおろそかになり、一般教養科目や第二外国語の単位を落とす不届きな学生でもあった。ところが、2年生になった途端に生活は一変する。
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