角幡唯介 生きることの深淵に導かれる 続100年後まで読み継ぎたい100冊
ここ数年で印象にのこった本を選んだ。45歳で自決した三島は、45歳までに死ななかった私にとっては乗り越えなければならない作家であり、改めてじっくり読んでいる。彼の思想性が最も表現されているのは、やはり『金閣寺』だと思う。若い頃はさっぱり理解できなかったが、再三再四の通読でようやく解読できた手応えをもった。
『カラハリが呼んでいる』は北極の村で読んだとんでもない傑作。夫婦で7年間も人跡未踏の砂漠で野営してライオンやハイエナを追うのだから、尋常ではない。あらゆる冒険記、旅行記をふくめて1、2位を競う内容で、100年後どころか1000年後にのこる本だ。これに匹敵する旅行記があるとすれば『秘境西域八年の潜行』だろう。雄大でロマンあふれる西川一三の旅を堪能したければ、抄本ではなく、全3巻、計2000ページ近くになる中公文庫の完全版を読破してほしい。
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