見出し画像

角幡唯介 生きることの深淵に導かれる 続100年後まで読み継ぎたい100冊

『金閣寺』三島由紀夫 新潮文庫
『カラハリが呼んでいる』マーク&ディーリア・オーエンズ ハヤカワ文庫 NF
『ウナギが故郷に帰るとき』パトリック・スヴェンソン 新潮社
『秘境西域八年の潜行』西川一三 中公文庫
『増補 日本人の自画像』加藤典洋 岩波現代文庫
『禅とオートバイ修理技術』ロバート・M・パーシグ ハヤカワ文庫 NF

 ここ数年で印象にのこった本を選んだ。45歳で自決した三島は、45歳までに死ななかった私にとっては乗り越えなければならない作家であり、改めてじっくり読んでいる。彼の思想性が最も表現されているのは、やはり『金閣寺』だと思う。若い頃はさっぱり理解できなかったが、再三再四の通読でようやく解読できた手応えをもった。

『カラハリが呼んでいる』は北極の村で読んだとんでもない傑作。夫婦で7年間も人跡未踏の砂漠で野営してライオンやハイエナを追うのだから、尋常ではない。あらゆる冒険記、旅行記をふくめて1、2位を競う内容で、100年後どころか1000年後にのこる本だ。これに匹敵する旅行記があるとすれば『秘境西域八年の潜行』だろう。雄大でロマンあふれる西川一三の旅を堪能したければ、抄本ではなく、全3巻、計2000ページ近くになる中公文庫の完全版を読破してほしい。

ここから先は

351字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…

「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了しました。今後は「文藝春秋 電子版」https://bunshun.jp/bungeishunju をご利用ください