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霞が関コンフィデンシャル 岸田家の「泰時殿」、財務省が狙う防衛費アップの財源、「棚ぼた」警視総監の評判、接待問題の余波続く総務省

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★岸田家の「泰時殿」

政権発足からちょうど1年がたった10月4日。岸田文雄首相の長男、翔太郎氏が首相秘書官として官邸入りした。支持率が低下するなかでの登用に「親バカ」「公私混同」などの批判も巻き起こった。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が終盤に入り、主人公の北条義時が息子の泰時を自分の側近としたタイミングと重なり、翔太郎氏を「泰時殿」と呼ぶ議員もいる。

かねてより岸田首相は後継者として育てたいと考えてきた。しかし、昨年の政権発足時にはこれまで事務所を守ってきた恩に報いるべく、政策秘書だった山本高義氏を官邸の政務秘書官に据えた。

だが、翔太郎氏も31歳となり、そろそろ潮時と見たのか、議員会館の事務所にいた翔太郎氏を官邸に迎え入れ、山本氏と入れ替えた。

岸田首相の念頭にあったのは、福田康夫・達夫親子である。15年前、総理の座にあった康夫氏は長男・達夫氏を秘書官に起用し、政界入りを念頭に研鑽を積ませた。秘書時代の達夫氏は河野太郎氏ら同世代の政治家と付き合い、康夫氏が霞が関の官僚を紹介することもあった。

また小泉進次郎氏の場合は、父の小泉純一郎氏の首相秘書官だった丹呉泰健元財務事務次官(昭和49年、旧大蔵省入省)が、経済運営や政策決定の仕組みを手ほどきする勉強会を開いていた。

岸田首相は、翔太郎氏の指導係に元経産事務次官の嶋田隆首相秘書官(57年、旧通産省)や、荒井勝喜首相秘書官(平成3年)らを考えているという。執権政治を確立した泰時のように、翔太郎氏が化けることはできるか。

★防衛費アップの内幕

岸田政権が旧統一教会問題で迷走を続けるなか、茶谷栄治事務次官(昭和61年、旧大蔵省)率いる財務省は着々と予算編成に邁進している。最大の懸案である防衛費増問題は首相官邸の下に有識者会議を設けて第三者の「客観性」を装い、防衛関係費の枠を他省庁にまで広げる落とし所が見えてきた。たとえば海上保安庁の予算など他省庁の予算を「防衛費」として計上するという。

歳出面における戦略は新川浩嗣主計局長(62年)が主導している。安倍政権では今井尚哉元首相秘書官(57年、旧通産省)が官邸の中心に座り、財務省は政策を推進するのに苦労した。岸田官邸には今井氏のような存在は見当たらず、歳出面は波乱なく進んでいる。

問題は歳入面、税制面だ。防衛費の増強に伴う財源を財務省は増税に求める。先頭に立つのは住澤整主税局長(63年、旧大蔵省)。税制一課長、総務課長、審議官として主税畑を歩んできた生粋の「主税エリート」である。

今回、税制改正を主税局と二人三脚で担う自民党税制調査会は旧大蔵省出身の宮沢洋一氏(49年)が率いる。宮沢氏は岸田派所属で、名うての財政再建論者でもある。

税調で実質的に議論を進める「インナー」のメンバーには小委員長が塩谷立氏、ライターと呼ばれる原案執筆者には福田達夫副幹事長と、いずれも安倍派の議員が入った。

路線的には財務省と気脈を通じる議員が多いが、問題は政治力だ。選挙に直結する増税を実現するには政治力が不可欠だが、この顔ぶれでは心もとない。

★「棚ぼた」総監の評判

首都・東京の治安を預かる警視総監に10月6日、警察庁官房長の小島裕史氏(昭和63年入庁)が就任した。前任の警視総監だった大石吉彦氏(61年)は、安倍晋三元首相暗殺事件の責任を取って退官。そうした状況で昇格した小島氏に対し、警察庁内には「棚ぼた」「消去法での選択」と揶揄する声が根強い。

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