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いまこそ『はだしのゲン』を生かそう 神田香織

文・神田香織(講談師)

『はだしのゲン』は原作者の中沢啓治さんがご自身の被爆体験をもとに1973年から「週刊少年ジャンプ」で連載された自伝的作品です。私は1986年にこの作品を講談化して以来、講談師人生の大半をゲンとともに歩んできました。作品の素晴らしさを全身で感じてきただけに、広島市教育委員会が『はだしのゲン』を小学3年生の平和教育教材から削除するというニュースには衝撃を受けました。なんでも、「浪曲で日銭を稼ぐ描写は現代の児童に馴染まない」「他人の池から鯉を釣る場面が、窃盗を助長する」ため、説明が必要で「漫画の一部引用では被爆の実態に迫りにくい」のだとか。私は10年前、島根県松江市教育委員会が学校図書館での閲覧を制限しようとした事件を思い出し、すぐにSNSに怒りの声をあげました。

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