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片山杜秀 過剰教の時代 続100年後まで読み継ぎたい100冊

『自治民範』権藤成卿 平凡社
『啓蒙の弁証法』テオドール・アドルノ/マックス・ホルクハイマー 岩波文庫
『沈黙の春』レイチェル・カーソン 新潮文庫
『成長の限界』ドネラ・H・メドウズほか ダイヤモンド社
『ノストラダムスの大予言』五島勉 祥伝社
『自動車の社会的費用』宇沢弘文 岩波新書
『プルートーンの火』高木仁三郎 社会思想社
『核の冬』カール・セーガンほか 光文社

 豪奢、贅沢、酒池肉林。古来、過剰は人間の夢であった。ただ、その夢に浸れたのは、王などの少数者に長く限られていた。ところが近代は過剰の快楽を最大多数に解放した。不断の成長を求める資本主義。けた違いの生産力を生み出す科学技術の革命。効率化のための計算の徹底を世の隅々にまでもとめてやまない極端な合理主義。それらが3本の矢となって、過剰への夢は極められていった。この100年とは“過剰教”の時代に他なるまい。

 むろん過剰は悪いことではない。人間精神の本性と立派に結びついている。ただ、人間の生も、地球環境も、過剰の追求にはついには耐えられない。有限だからだ。過剰は結局、逸脱と破壊に辿りつく。ゆえに、そんな時代ならではの未来に読み継がれるべき名著とは、過剰への警告と反省を促す書物であってよい。

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