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伊丹十三 絞られた雑巾

俳優、エッセイストなどを経て映画監督となった伊丹十三(1933〜1997)は日本人論をエンタメに昇華した。全10作に出演した女優で妻の宮本信子氏が見た“伊丹流”。

伊丹十三氏

 愛車は真っ赤なロータスエラン。タバコを咥え、カシミアのロングコートにマフラーをそよがせながらドラマの現場に現れたのが、伊丹さんでした。上京したばかりの私は呆然と、別世界の人を眺めていました。結婚するとは夢にも思いませんでした。

伊丹十三氏(愛車のロータスエラン)

 伊丹さんはいつも「あなたはいい女優なのに、いい役が来ないね」と言ってくれました。私は私で、伊丹万作の子だからいつかは映画を撮ってほしいと思っていました。

宮本信子氏

 転機は、伊丹さん50歳、私が38歳の時に訪れます。父の葬式が、あまりに面白かったのです(笑)。親戚の人間模様に見入った伊丹さんは「脚本作るから、あなたも早くメモしてくれ!」。必死でメモを取り、自宅を抵当に入れて夢中で作った「お葬式」は大ヒット。嬉しかったです。たくさんの方に観て頂いたおかげで14年間、自己資金で制作を続けることができました。「自分でやらないと、作品が変わってくる」と、自立した映画作りにこだわりました。

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