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平戸海 大相撲新風録21 先人の教えを胸にひたすら前へ 佐藤祥子

11月号_大相撲新風録写真(平戸海)*クレジットあり=日本相撲協会提供

平戸海(長崎県平戸市出身、境川部屋、22歳)
©日本相撲協会提供

先人の教えを胸にひたすら前へ

先の秋場所、新入幕力士として土俵に上がったのは境川部屋の平戸海だ。178センチ135キロの決して大きくはない体で、押し相撲を得意とする22歳。「自分に技はない。死ぬ気で行くくらいに“引いたら負け”だと思っている」と、ひたすら前に出るけれん味のない相撲を身上とし、玄人筋をうならせている。長崎県平戸市の出身で、中学卒業後に15歳で角界の門を叩いた“たたき上げ”の力士でもある。

師匠の境川親方(元小結両国)もまた、長崎県出身であり、弟子思いで男気あふれる角界きっての好漢だ。1998年に出羽海部屋から分家独立した境川部屋(当時中立部屋)には、敷地内の日当たりのいい一角に「吉の谷」の名を刻んだ石碑がある。境川親方より13歳年上の故・元幕内吉の谷もまた、同じ長崎県出身で、弟のように可愛がっていた後輩の分家独立に尽力、奔走するものの部屋の完成を目にすることなく、地鎮祭の直後に亡くなってしまったのだという。

境川部屋には「先人、故人を尊び、後輩を導く」「今、この時の積み重ねが将来である」「己だけが辛いわけではない、道に迷ったら、故郷・家族を思い出す」と、10の綱領があり、稽古後に全員で唱和するのを日課としている。この綱領は、「兄やん」と呼んでいた吉の谷と、「酒を飲みながらふたりで話したことを文章にしただけなんだよ」と境川親方はいう。

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