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安治川親方 『道をひらく』を何百回も

文・安治川親方(元関脇・安美錦)

 松下幸之助さんのロングセラー『道をひらく』(PHP研究所)を初めて買ったのは高校生の時でした。青森県の田舎の高校に通っていて、駅前には本屋しかなかったんです。なんとなく手に取って立ち読みしたのが最初の出会いで、以来、何十冊買ったかわからないくらい。気が付いたら失くなって、気が付いたら傍にあるという本なんですよ。力士時代には、地方場所や巡業先で同じものを買って、移動のバスの中で読んだりもしていました。今も自宅のトイレなどにポンと置いてあり、目をつぶって本をパッと開く。見開きの短いコラムで、たとえば「志を立てよう」という題名のページでは、「年齢を恥ずかしがることはない」などと書かれているんです。若くて元気な時は、「よし! 横綱を倒すぞ」と思わされたり、ケガをして十両に番付を下げた時には、「幕内復帰するぞ!」という気持ちになる。自分が漠然と思っていることに、その時々で寄り添ってくれるというのでしょうか。読みやすい文章で、自分の背中を後押ししてくれる。何百回と読んでも新鮮なんですね。2022年末に独立し、安治川部屋を興して師匠となりましたが、弟子たちにも手に取ってもらいたい。相撲部屋のトイレにも置いておきましょうか(笑)。

 安治川親方(元関脇・安美錦)

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