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第168回芥川賞受賞者インタビュー 佐藤厚志「暗くても救いがなくても書く」

芥川賞作家にして書店員。「店頭でサインを求められ……」

受賞のことば 佐藤厚志

 感染症が猛威をふるう中、病気で亡くなった親友の人生を全力で肯定するつもりで「荒地の家族」を書いた。

 物語の風景は頭の中のフィルターを通って現れた土地であり、現実とイコールではない。「荒地」と表現した亘理の海辺も決して荒涼としているわけではない。だが、眺めていると自分の中にある「荒地」に気づく。

 生は苦しい。その苦しみのひとつに近しい人の死がある。死はつらく、思い出すこともまたつらい。それでも傷口に触るように死を振り返る。共有した時間を繰り返し思い起こすことで痛みが鈍化していき、いつしかその記憶が癒やしになる。そう願う。小説を読んで、一人ひとり違った風景を受け取って欲しい。

〈略歴〉
1982年生まれ。2017年「蛇沼」(新潮新人賞)でデビュー。第三作「象の皮膚」は三島賞候補。仙台市在住、書店勤務。

佐藤厚志さん ©文藝春秋

——作家と書店員、二足の草鞋を履かれています。

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