短歌|木下龍也
はな、ればなれ
染み込んだつゆに衣をうばわれる痩身の海老のように起床
空き缶の日の空き缶に早朝のごみ捨て場まで連れて行かれる
こころっていつもからだについてきて歩行の邪魔をするからきらい
花を嗅ぐひとときだけは許されたような気持ちでマスクを外す
くちづけのたびに明度は低くなりあなたにはもうまぶしさがない
言葉から次の言葉へ燃えうつる声の終わりに恋を失う
細長い花瓶の底にこびりつく花の無念を洗えずにいる
(2020年10月号)
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