小説「観月 KANGETSU」#72 麻生幾
第72話
「タマ」(4)
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固定電話が置かれている台の上に留められたカレンダーへ、七海はふと目をやった。
ぎっしり書き込まれたスケジュールの中でその2日間だけが、ひと際大きな赤い丸印で囲まれている。
──10月31日と翌日の11月1日の2日間。
城下町を幻想的な灯(あか)りに包む観月祭があと3日後に開催される。
昨日、母が言っていたように、去年の観月祭が台風の影響で1日だけの開催となったの