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2022年2月の記事一覧

【フル動画】「プーチンがゲームチェンジする『世界のエネルギー経済』」加谷珪一氏オンライン講義

◆ウクライナ侵攻で露わになった“危険な経済ゲーム”文藝春秋digitalは、3月4日(金)19時〜、経済評論家の加谷珪一さんによるオンライン講義「プーチンがゲームチェンジした『世界のエネルギー経済』」を開催しました。 《フル動画は本ページの一番下にあります》 2022年2月24日、ロシア軍がウクライナへの侵攻を始めました。首都キエフ近郊の空港など複数の箇所で戦闘が確認されており、キエフの北に位置するチェルノブイリ原子力発電所も占拠されました(※2月25日時点)。25日には

塩野七生 各人各句 日本人へ222

文・塩野七生(作家・在イタリア) 他の人のことは知らないが、私の場合の執筆の動機は、その人物の歴史上の重要度なんぞにはない。その人が言ったという一句に眼がとまり、このようなことを口にする男とはどんな人間であったのか、に興味を持ったことから始まるので、入り口は常に、学問的どころかすこぶる感覚的。 冬のある日、翌年の春に東征に発つと決めたアレクサンダーは、出陣の挨拶に旧師を訪れた。50歳に達していたアリストテレスは、今ではマケドニアの王になっているアレクサンダーの少年時代の教

吉本由美 淀川美代子さんのこと

文・吉本由美(エッセイスト) 「オリーブ」「アンアン」「ギンザ」「クウネル」の編集長として長きにわたり若い女性に夢を与え牽引してきた伝説的編集者・淀川美代子さんがみんなの前から旅立って2カ月近く経つ。死後ひと月は公にしないという本人の遺志のもとその訃報は友人知人職場の人たちの誰にも閉じられていた。 私に連絡が入ったのもひと月後だ。初めはひと月も後に水くさいと思ったが、いや、それが美代子さんだと頷けた。表立つのが苦手なのだ。騒がれるのが嫌いなのだ。だから葬儀もお別れ会も“な

藤原正彦 パンドラの箱 古風堂々34

文・藤原正彦(作家・数学者) 整理整頓が苦手で、幼い頃から「出しっ放し、やりっ放し」と母に叱られていた私だった。中1のときにはじめて4畳の個室が与えられ、29歳で渡米するまではここで、机、大きな本棚、散らばった本や論文、脱ぎ捨ての衣類などのすき間に万年床を敷いて寝ていた。「何がどこにあるか分かっているからいじらないでよ」と母に釘をさしておいたのだが、見かねた母は時折掃除をしていたようだ。自分で掃除した記憶がないのに雑然さが悪化しなかったからだ。 この正月に、心を改め整理整

五木寛之「文藝春秋と私 池島さんと半藤さん」

政界のフィクサー、伝説の女優……その人脈に驚かされた。/文・五木寛之(作家) 五木氏 「”植木賞”もらったんやってね」いま身に着けているこの腕時計は、直木賞でいただいたもの。1965年の、オメガのコンステレーションです。文字盤の裏に「五木寛之君」とか「日本文学振興会」なんて刻印してあります。文春とのご縁はその時からですね。『蒼ざめた馬を見よ』という作品で受賞したんですが、もう55年も昔のことになります。 当時、私は金沢に住んでいました。それまでは東京で放送作家をやったり

ニッポンの100年企業③ コマツ「儲けはその次」樽谷哲也

北陸の地から世界へ雄飛したメーカーの背骨とは。/文・樽谷哲也(ノンフィクション作家) コマツの職は将来安泰 「株式会社小松製作所」と漢字の正式社名でしゃちほこ張るより、「コマツ」と平易な通り名で、さらには「KOMATSU」という英字表記のほうが私たちに広く浸透している会社なのではないであろうか。その英字ロゴを見かける場合のほとんどは、巨大な建設機械の黄色いボディーなどであろう。建設機械や鉱山機械のメーカーとして国内最大手であり、世界でも米キャタピラーに次ぐ。 東京・赤坂に

新連載「仁義なきヤクザ映画史」① 日本百年の闇をあばく 伊藤彰彦

娑婆で傷つく元受刑者――西川美和『すばらしき世界』(2021)/文・伊藤彰彦(映画史家) 民衆とともに生きたヤクザ 1929年、妻と離婚し、父親の看病のために故郷前橋に戻らざるをえなかった詩人の萩原朔太郎は、自宅から20キロの所にある国定忠治の墓まで自転車で行き、こう詠んだ。 見よ 此処に無用の石/路傍の笹の風に吹かれて/無頼の眠りたる墓は立てり(「国定忠治の墓」) 国定忠治は殺人や関所破りの廉で磔刑にされた侠客。近代人の孤独を震えるような繊細さで表現した朔太郎は、終生

マンガ『大地の子』第41話 刺す|原作・山崎豊子

第41話 刺す★前回の話を読む。 ★次回の話を読む。 ★最初から読む。

新連載「菊池寛 アンド・カンパニー③」鹿島茂

高等師範学校を除籍に──挫折と反発の青年時代。/文・鹿島茂(フランス文学者) ★前回を読む。 鹿島氏 除籍の理由菊池寛は高松中学校卒業後の進路で悩んでいた頃のことについてこう書いている。 「私は自分の家に学資がないことを知り切っていたので、どうにかして、金のかからない学校に行きたいと思った。むろん、私自身の衷心の望みを云えば、高等学校から大学へ行きたいのは、山々であったが、事情止むを得ない以上、最少の学資で行ける学校を選ぶ外はなかった。そのために、私の選んだのは、外国語

有働由美子×岸田裕子総理夫人「家庭では『聞く力』はないです」

news zeroメインキャスターの有働さんが“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回のゲストは、総理夫人の岸田裕子さんです。 「会った瞬間、結婚すると思った」それでも夫婦ゲンカが始まると——有働 昨年10月にファーストレディになられて、それまでとは生活は大分変わりましたか。 岸田 主人は立場とともに世界が一変したと思いますが、私はそれほど変わっていないです。ただ、総裁選やその後の衆院選では私も取材を受けることが多かったので、地元

新連載「記者は天国に行けない②」清武英利

いち、にのさん、でドアを開けた瞬間……支局時代に見た記者たちの原点。/文・清武英利(ノンフィクション作家) ★前回を読む。 1そのころの青森警察署は、庁舎のあちこちが古びて、陸奥湾から吹きつける潮風に浸食され始めていた。変色したそのビルの2階に、強行犯や盗犯を相手にする刑事たちの大部屋があった。 奥の窓際に陣取るのが、ねぶたの関羽のように大頭の刑事一課長である。逆光に包まれると、赤ら顔はひどく黒く見えた。記者たちがデカ部屋に自由に出入りできる時代で、彼の机の前の、くたび

みうらじゅん×竹倉史人 土偶はゆるキャラ!?

縄文時代の「ヤベえ発見」を縦横無尽に語り合う。/みうらじゅん(イラストレーターなど)×竹倉史人(人類学者) みうらじゅん賞とサントリー学芸賞 「土偶は縄文人が食べていた植物や貝をかたどったフィギュアである」という仮説を立て、土偶の正体を明らかにした話題の本『土偶を読む』(晶文社)。昨年末に第24回みうらじゅん賞を受賞した著者の竹倉史人氏と、賞を贈ったみうらじゅん氏による初対談。 『土偶を読む』(晶文社) みうら 昨年の4月に『土偶を読む』が出てすぐに、友人のいとうせいこ

荻原健司(長野市長)「スキーヤー、メイヤーになる」

文・荻原健司(長野市長) 群馬の草津で生まれ育ち、大学時代を埼玉で過ごした私が長野市に住み始めたのは、1992年のことです。私はノルディック複合というジャンプとクロスカントリースキーを組み合わせる種目の選手として、オリンピック2度の金メダルをはじめ、世界選手権、ワールドカップの個人総合3連覇など活躍できましたが、それも長野の皆さんのおかげです。その恩返しがしたくて長野市長選に出馬。昨年11月から市長を務めています。 30年前、大学卒業を控えた私が長野へ移り住んだのは、6年

「シェイクスピアの台詞」松岡和子(翻訳家)

文・松岡和子(翻訳家) 「シェイクスピア・ハイ」――これは俳優の横田栄司さんがその役者経験から産み出した造語である。横田さんは蜷川幸雄さんの演出する舞台の常連で、だから彩の国シェイクスピア・シリーズでも重要な役を数多く演じてきた。『ヴェニスの商人』のバサーニオや『ジュリアス・シーザー』のシーザーなど。口跡は綺麗だし滑舌はいいし、役の捉え方は的確だし、翻訳者にとってはまことに頼りになる俳優の一人だ。 その横田さんが、『ヴェローナの二紳士』のポストトークのときに、「シェイクス