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文藝春秋digital

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2022年7月の記事一覧

《ロング・バージョン映像》勝共連合会長が安倍元首相とのビデオ出演交渉の裏話を激白

文・鈴木エイト 滋賀県生まれ、日本大学卒業。2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)『日本を壊した安倍政権』(扶桑社)。Twitter ID:@cult_and_fraud 《約20分にわたるロング・バージョ

「爆弾」著者・呉勝浩インタビュー

「次は1時間後に爆発します」 いがぐり頭で、ビール腹、酔っぱらいの49歳、名前はスズキタゴサク。酒屋の店主を殴り野方署に連行されたこの中年男が、東京を恐怖の底に陥れる爆弾魔だった――。ミステリー小説の旗手である呉勝浩さん。彼の最高傑作との呼び声高い本作は、直木賞の候補作になった。 「この本が文学賞に縁があるとは思わなかった。最近、取材で『ノミネートされるのでは?』と聞かれるたびに、心の中で『わかってないなあ』と悪態ついてましたが、編集者に『言霊ってあるんですよ。嘘でもいい

〈テキスト版〉浜崎洋介×與那覇潤「《紀尾井町床屋政談》ゆでガエル日本『戦後は続くよ選挙後も?』」

文藝春秋digitalは、7月5日(火)、文芸批評家の浜崎洋介さんと、評論家の與那覇潤さんによるオンライン対談イベント「《紀尾井町床屋政談》ゆでガエル日本『戦後は続くよ選挙後も?』」を開催しました。 参議院議員選挙を前にしたこともあり、「自民党圧勝」が予測されていた選挙への思いから対談はスタート。やがて平成期に志向された「右」と「左」両サイドからの脱戦後、岸田政権の特色、日本の政治家に求められる資質、日本人にとっての「成熟」の必要性……と、縦横無尽に話題は展開していきました

平山周吉「満洲国グランドホテル」新天地に渡った日本人の群像 評者・中島岳志

新天地に渡った日本人の群像満洲国は約13年間続いた。それは紛うことなき侵略の歴史だったが、戦後の日本人に、奇妙なロマンと郷愁を残した。満洲が内包する魔性とはいったい何なのか。 満洲には様々な日本人の願望が投影された。「王道楽土」の理想、大陸への憧憬、一攫千金の夢、功名心、出世……。そこには野心家から曰く付きの人物まで、多くの人の欲望がうごめいていた。 著者は1937年から38年ごろの満洲に焦点を当てる。そして、「映画のグランドホテル形式に倣って」多くの人物を登場させ、満洲

土門拳「土門拳の風貌」有名人たちの恐るべき肖像写真集 評者・原田マハ

有名人たちの恐るべき肖像写真集写真を撮られるのが苦手である。 撮影されるときは、ごまかそうとしてやたら笑顔を作ってしまう。いつもそんなふうだから、私のポートレイトはプロが撮ったものでも友人が撮ったものでも同じようにニカッと笑った顔である。時々、カメラマンに「撮られ慣れていますね」と言われることもあるのだが、「不自然な」笑顔を「自然に」作ることが、撮り手にとっては「慣れている」ように感じられるのかもしれない。そんな時に出来上がってきた写真を見ると「いかにも」な感じ。プロのカメ

宇佐見りん「くるまの娘」“正しさ”で割り切れないもの 評者・平松洋子

“正しさ”で割り切れないもの小説でなければ伝え切れないものが、明確な輪郭と質量とともに存在している――読後、まっさきに脳裏に浮かんだ感情だ。『くるまの娘』が浮き上がらせるものの正体、それは、とかく「正しさ」を言い募り合う個人や社会のありさまでもある。 ある家族の壮絶な修羅が描かれる。ふだんは穏やかだが、スイッチが入ると残酷さを丸出しにして言葉と力の暴力をふるう父。かつては気丈だったが、脳梗塞を患い、健忘の後遺症とアルコール依存に苦しみ、しばしば錯乱する母。兄は家を去り、弟は

詩 草間小鳥子「数値化されない波」

数値化されない波「もう勝ち上がれないと知った日の しずかな夕陽をおぼえていますか」 正論で人を殺せるスマートな未来だ 透明なしごとを終え 薄い楽譜を抱いて眠る 戦禍に研ぎ澄まされた耳で波の音を聴こう 勝ち負けとは無縁の波 あいまいな喪失を抱えながら わたしたちは恢復する 猫などいるとそれはやや早い

俳句 生駒大祐「紙と雨」

紙と雨声に振り向けば柱や夏の朝 卯の花腐し紙にして汝を持ち歩く 水崩れ落ちて断崖額の花 夏曇天造花に佇てば贋の香 百日紅街へ歳月降り注ぐ 飲む針の数にたぢろぐ夕立かな 軋む音して今日了る枇杷の種

短歌 小佐野彈「永遠の社長夫人への挽歌」

永遠の社長夫人への挽歌永遠の社長夫人として小佐野敏子は逝けり 金の寝床で なべて死はかならず白に帰結することを教へてくるるSkype 正信偈うたふ導師の足元であかあかゆれる退出ボタン 「いつの日か彈ちやんの住む台湾に行つてみたいわ」やつと来れたね 真四角の画面にしんと立ちのぼる伽羅の煙を指もて追ひぬ もし俺がゲイぢやなければいまごろは(おつと、危ない危ない)合掌。 愛用のMacBookの奥底でけふも響いてゐる正信偈

【フル動画】 片渕須直×北原尚彦 対談「〈アニメーション映画制作術〉片渕須直とシャーロッキアンの“異常な愛情”」

◆“異常に深く調べる”と新しい“何か”が生まれる?文藝春秋digitalは、8月2日(火)19時〜、アニメーション映画監督の片渕須直さんと作家/ホームズ研究家の北原尚彦さんによるオンライン対談イベント「〈アニメーション映画制作術〉片渕須直とシャーロッキアンの“異常な愛情”」を開催しました。 《対談フル動画はこのページ下部にあります》 片渕須直さんはアニメーション映画を制作する際、緻密な取材・考証を行うことで知られています。監督を務め、2016年に公開されると、1133日間

「文藝春秋」編集長・田中健五 斎藤禎(文藝春秋元常務) 創刊100周年記念企画

「とにかく新鮮な頭蓋骨を探して来なさい」。好奇心旺盛で、人たらしだった。/文・斎藤禎(文藝春秋元常務) 「黙して、みんな墓場まで持っていく」やっぱり、ここから書きはじめるしかない。 小林 三島君の悲劇も日本にしかおきえないものでしょうが、外国人にはなかなかわかりにくい事件でしょう。 江藤 そうでしょうか。三島事件は三島さんに早い老年がきた、というようなものなんじゃないですか。 小林 いや、それは違うでしょう。 江藤 (略)老年といってあたらなければ一種の病気でしょう

鹿島茂「京都の孤独な夜」菊池寛アンド・カンパニー⑧ “東京組”の友情が彼を文壇に押し上げた

文・鹿島茂(フランス文学者) ★前回を読む。 鹿島氏 「選科生たることに絶えず屈辱を感じていた」 「九月十三日。 到頭京都へ来た。山野や桑田は、俺が彼等の圧迫に堪らなくなって、京都へ来たのだと思うかも知れない」 これは菊池寛が大正7年7月に『中央公論』に発表して文壇的地位を確立した『無名作家の日記』の書き出しである。フィクションの中の日付は案外、現実を正確に反映しているというのがわれわれの立場であるから、菊池寛は京都大学英文科選科に入学すべく大正2年(1913年)9月

澤田瞳子(作家) 「あなたの小説が大好き」母に出したファンレター

著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、澤田瞳子さん(作家) です。 人生の先輩先日、歯医者から帰った75歳の母が「お昼ご飯買ったよ」とマクドナルドのひるまック(ランチセット)を広げたのでびっくりした。しかもその日発売の期間限定商品のパイまで入っている。 「人生でほとんど初めて入ったようなものだから。前に並んでいたお兄さんに買い方聞いたら教えてくれて」 なるほど新製品を買ったのは、その方のアドバイスゆえか。それにしても幾ら興味を持っていたとはいえマクドナルド

桜木紫乃(作家) 山師の父、84歳。老後は静かに、頼むよタケちゃん

著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、桜木紫乃さん(作家)です。 頼むよタケちゃんまあとにかく、タケちゃんにはよく殴られた。私が彼の長女として生まれたのも、何かの巡り合わせには違いないのだが。生来の山師、常に何かと闘っていないと生きている気のしない男を父に持つと、いろいろある。 山師の友はペテン師だが、どちらが強いかと問われたらペテン師に軍配が上がる。なぜなら、山師は自分の欲に負けるため、負けてみせるという技が使えない。 タケちゃんの口癖は「オレの顔色を見