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日本語探偵 【う】「うんぬんかんぬん」
発生源は思ったより古い|飯間浩明

日本語探偵 【う】「うんぬんかんぬん」 発生源は思ったより古い|飯間浩明

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【う】「うんぬんかんぬん」発生源は思ったより古い 「『電車が遅れまして』うんぬんかんぬんの言い訳を彼は続けた」などと言うことがあります。この「うんぬんかんぬん」を、あなたは使うでしょうか。最初に聞いたのはいつか、覚えていますか。 私は高校時代、1985年に友人が使っていたので知りました。「云々(うんぬん)」は分かるけど、「かんぬん」って何だ。そんなことばはないはずだ! 解説すると、「かんぬん

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日本語探偵【ひ】「ひとりごちる」は厳然たる現代語である|飯間浩明

日本語探偵【ひ】「ひとりごちる」は厳然たる現代語である|飯間浩明

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【ひ】「ひとりごちる」は厳然たる現代語である 「ひとりごちる」という現代語があるかどうか、ツイッターでちょっとした議論になりました。「独り言を言う」の意味で使われる動詞のはずですが、次のような趣旨の発言があったのです。 「『ひとりごちる』は古語であり、現代の辞書には載っていない。厳密には、古語では『ひとりごつ』で、『ひとりごちる』は最近の造語らしい」 これに対し、「ひとりごちる」を普段創作

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日本語探偵 【ほ】「ホワットアバウト」のうまい日本語訳はある?|飯間浩明

日本語探偵 【ほ】「ホワットアバウト」のうまい日本語訳はある?|飯間浩明

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【ほ】「ホワットアバウト」のうまい日本語訳はある? ネット上の議論で、よく「お前が言うな」という返しが使われます。略して「おまいう」。Aさんに遅刻を批判されたBさんが「君だって忘れ物をするじゃないか」と話をすり替える論法です。 これと似ていて、ちょっと違う英語にwhataboutism(ホワットアバウティズム)というのがあります。批判された人が“What about...?”(じゃあ〇〇はど

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日本語探偵 【は】「発出」なる役所語 20世紀末から一般的に|飯間浩明

日本語探偵 【は】「発出」なる役所語 20世紀末から一般的に|飯間浩明

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【は】「発出」なる役所語 20世紀末から一般的に コロナ危機は2021年も続くようです。1月7日、1都3県を対象として2回目の緊急事態宣言が出され、さらに他の地域にも拡大されました。 政府や自治体は「緊急事態宣言を発出」と繰り返しました。この「発出」とは何かということが、しばしば話題に上るようになりました。 これが役所語であることは推測できます。ただ、昔はあまり使われず、私の携わる『三省堂

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日本語探偵 【ぴ】「ぴえん」なる新語 日本語の伝統にかなう|飯間浩明

日本語探偵 【ぴ】「ぴえん」なる新語 日本語の伝統にかなう|飯間浩明

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【ぴ】「ぴえん」なる新語 日本語の伝統にかなう 毎年末、私を含む国語辞典の作り手が集まって「今年の新語」(三省堂主催)を選びます。その年あたりに特によく使われ、かつまた、今後の辞書に採録されてもおかしくないことばを選ぶ、というのがこのイベントの趣旨です。 2020年の大賞は「ぴえん」に決まりました。「テストの点が悪かった、ぴえん」などと、小声で泣く様子を表します。19年あたりからSNSなどで

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飯間浩明の日本語探偵 【し】「終息」か「収束」か自分の感覚で選んでOK

飯間浩明の日本語探偵 【し】「終息」か「収束」か自分の感覚で選んでOK

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【し】「終息」か「収束」か自分の感覚で選んでOK 2020年に深刻化した新型コロナウイルスの感染拡大は、しゅうそくの見通しが立ちません。と、この「しゅうそく」をどう書けばいいのか、ネットでは繰り返し疑問の声が上がっています。 私は、ツイッターで「結論を言えばどっちでもいい」と書きました。「終息」は「おわる」「やむ」こと、「収束」は「(広がったものなどに関して)おさまる/おさめる」ことです。漢

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日本語探偵 【ふ】「フェイク」の功労者 トランプさんには感謝|飯間浩明

日本語探偵 【ふ】「フェイク」の功労者 トランプさんには感謝|飯間浩明

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【ふ】「フェイク」の功労者 トランプさんには感謝 米国のトランプ大統領は、つくづく皮肉な存在だったと思います。「アメリカを再び偉大な国に」を掲げて大統領に就任したのに、再選を賭けた大統領選では敗北の結果を受け入れず、偉大とは正反対の態度を取りました。great(偉大)という単語の価値は、トランプ時代に大幅に下落したんじゃないかな。 皮肉と言えば、都合の悪いニュースをすべて「フェイク」(にせ情

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飯間浩明の日本語探偵【し】「恣意的」ということば どう理解すればいいのか

飯間浩明の日本語探偵【し】「恣意的」ということば どう理解すればいいのか

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【し】「恣意的」ということば どう理解すればいいのか 検察庁法の改正案が議論されていた2020年5月、ネット上で「恣意的」ということばの検索頻度が急上昇しました。法案では、検察幹部の定年を、政府が認めた場合に延長できる規定がありました。「政権が制度を恣意的に運用するおそれがある」と、抗議の世論が盛り上がり、法案は先送りになりました。 この「恣意的」については、しばしばネット上で話題になってい

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飯間浩明の日本語探偵 【ひ】「誹謗」なき「批判」 識者さんお手本見せて

飯間浩明の日本語探偵 【ひ】「誹謗」なき「批判」 識者さんお手本見せて

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【ひ】「誹謗」なき「批判」 識者さんお手本見せて 5月下旬に女子プロレスラーの木村花さんが亡くなったことは、ネット社会に衝撃を与えました。いわゆる恋愛リアリティー番組に出演中の言動について、彼女がネット上で強烈な誹謗中傷にあっていたと報じられたからです。 ことばが人を殺したのかもしれない。ことばを専門とする人間として強い無力感にとらわれていた時、オンラインメディアの記者から「今回の件をどう思

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飯間浩明の日本語探偵【し】「車厘」何と読む?番組作る姿勢に感服

飯間浩明の日本語探偵【し】「車厘」何と読む?番組作る姿勢に感服

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【し】「車厘」何と読む?番組作る姿勢に感服 テレビ東京で7月13日、「サンドウィッチマンの脱落テスト!」というクイズ特番が放送されました。2チームに分かれて漢字の知識を競う内容です。私は監修とVTR解説を担当しました。 テレビ番組からは時々協力を頼まれますが、今回の番組で感服したのは、クイズ作家の方が問題の裏取りを厳密に行っていたことでした。たとえば、漢字の成り立ちに関する問題を作るにしても

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