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武田徹の新書時評| “人間という管”の入口と出口

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。  “人間という管”の入口と出口  「人間は、しょせん一本の管である」と書いたのはエッセイストの山口瞳だった。確かにいかに金持ちでも才人でも食べては排泄を繰り返す“食物の通り道”として一生を終えることに変わりはな…

武田徹の新書時評|戦後民主主義と今日の民主主義

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 戦後民主主義と今日の民主主義 次々に難題に見舞われる日本社会では過去が刻々と風化してゆく。たとえば安保関連法制反対デモが国会前で展開された2015年、学生集団SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)が注目された…

武田徹の新書時評|専門家に委ねてはならない「原子力」

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 専門家に委ねてはならない「原子力」 菅義偉首相は就任後の所信表明演説で2050年までに脱炭素社会を目指すと述べた。気になるのは実現の方法だ。経済活動の規模を維持しつつ炭素排出量を大幅に減らすには原発の利用が現状では…

武田徹の新書時評|音楽と社会のあり方を考える

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 2020年はベートーヴェン生誕250年に当たり、新書でも関連書が揃った。 中野雄『ベートーヴェン』(文春新書)は罵声と殴打で息子を鍛えた父など家族の紹介から始まり、名曲『英雄』『運命』も初演では失敗続きだった天才音楽家…

コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 戦争・五輪・コロナ|武田徹

矢継ぎ早に刊行されたコロナ関係書の中では山内一也『ウイルスの世紀』が白眉だった。新型コロナウイルスに関する記述はそう多くはないが、日本を代表するウイルス学者が過去の研究や感染症対策史について書いてきた蓄積と接続されることで、歴史的な遠近感の中で現在のコロナ禍を顧みられる。 SARSな…

武田徹の新書時評|過渡期にあるアメリカ

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 この稿が読まれる時には第46代米国大統領が決まっているはずだ。だが、現職トランプ勝利で更に加速度をつけるか、民主党が政権奪還して別方向に切ろうとする舵に抵抗する惰性として残るかの違いこそあれ、米国の現勢がその未来…

武田徹の新書時評|コロナが浮き彫りにした「東京問題」

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 あれは東京問題――、菅義偉首相は官房長官時代に東京都の新型コロナウイルス感染者急増について、23区の保健所を制御できない都庁の問題だと突き放すように述べた。ただ、都の肩を持つわけではないが、人口が集中し、通勤・通…

武田徹の新書時評|元始、新書は実用書だった

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 平塚らいてうの言葉を真似れば、元始、新書は実用書だった。新しい知識が得られて役立つだけではない。一流の専門家が創造活動のノウハウを惜しげもなく伝授してくれる場も主に新書だったのだ。 その代表格が梅棹忠夫『知的生…

武田徹の新書時評――宇宙の広大さと人間の小ささ

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。  地平線から上る満月は眼の錯覚もあって巨大に見え、月という天体本来の球形に近く感じられる。思わず見惚れてしまった経験のある人も多いだろう。  そんな月は佐伯和人『月はすごい』(中公新書)によれば可能性の宝庫だと…

【全文公開】令和に持ち越された宿題 武田徹さんの「わたしのベスト3」

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。  災害の多かった平成の30年間は、天皇皇后が被災地を訪ね、避難者に優しく言葉を掛ける姿が頻繁に見られた。だが、そうした「象徴的」行為を越えて、現実的な救いの手を弱者に差し伸べる社会が作られていたかといえば…