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スターは楽し 千葉真一|芝山幹郎
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スターは楽し 千葉真一|芝山幹郎

千葉真一 お茶目な火炎放射器千葉真一を飛行機のなかで見かけたことがある。1990年代の初めごろだったか、バハ・カリフォルニアのロスカボス空港からロサンジェルス行きのアラスカ航空機に乗り込んだところ、機体前部の6席しかないファーストクラスのひとつに、サニー・チバが腰を下ろしていたのだ。おや、という表情を私が浮かべたせいか、千葉真一は眼もとをちょっとゆるめてくれた。それだけの話だが、なぜか記憶に残っている。 いまにして思うと、千葉真一は当時50代前半で、すでに活動の拠点を

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スターは楽し ケヴィン・コスナー|芝山幹郎
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スターは楽し ケヴィン・コスナー|芝山幹郎

ケヴィン・コスナー WEISSMAN, ALAN/Album/共同通信イメージズ エゴを消したサバイバルあのころ、ケヴィン・コスナーの人気は爆発的だった。「ゲイリー・クーパーの再来」と呼ばれ、映画スターの枠を超えたカルチャー・ヒーローと目されることさえあった。1980年代の終わりから90年ごろにかけての話だ。 人気が頂点に達したのは、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)に主演し、監督も兼ねたときだった。これはスー族の集団に身を投じた北軍中尉の物語だ。封切直後、私

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スターは楽し サシャ・バロン・コーエン|芝山幹郎

スターは楽し サシャ・バロン・コーエン|芝山幹郎

サシャ・バロン・コーエン ©AF Archive/20th Centu/Mary Evans Picture Library/共同通信イメージズ 世界がのけぞった暴走力 『ボラット』(2006。異様に長い副題は省略する)を初めて見たとき、私は笑い転げた。腹を抱え、身をよじり、試写室の椅子から落ちそうになった。 そのときはさすがに、俺は莫迦じゃないかと思った。椅子から落ちかけることはないだろうと少しだけ反省したら、もっと莫迦な人がいたことが判明した。 正体を明かすと、

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スターは楽し ソフィア・ローレン|芝山幹郎

スターは楽し ソフィア・ローレン|芝山幹郎

自生した果実の「無敵」ジーナ・ロロブリジダ、シルヴァーナ・マンガーノ、ソフィア・ローレン、クラウディア・カルディナーレ。第二次世界大戦後、イタリアからは豪快な……もとい、豪華なスターが続々と登場した。 いや、「豪快」と呼ぶほうが、むしろ適切かもしれない。見た目の華やかさはいうまでもないが、彼女たちは、肝っ玉の据わり方が尋常ではなかった。 なかでもソフィア・ローレンの迫力は圧倒的だ。10代の私は、スクリーンの彼女を見て無敵だと思った。 174センチの長身。力強く突き出た胸

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スターは楽し 小林 旭|芝山幹郎

スターは楽し 小林 旭|芝山幹郎

小林旭 通俗を突き破る一本気 顔を見てすぐに声を思い出すスターは数多い。ハンフリー・ボガート、マリリン・モンロー、三船敏郎、若尾文子……。 だが、名前を聞いて、顔より先に声を思い出すスターは意外に少ない。真っ先に浮かぶのは、ダース・ヴェイダーの声で知られるジェームズ・アール・ジョーンズだが、日本にも圧倒的な声の力を持ったスターがいた。 小林旭だ。 小学生だったころ、私や近所のガキどもは、声を張り上げてアキラの歌を合唱していた。最初はたしか〈ダイナマイトが百五十屯〉

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スターは楽し マシュー・マコナヘイ|芝山幹郎

スターは楽し マシュー・マコナヘイ|芝山幹郎

マシュー・マコナヘイ ©Billy Bennight/ZUMA Wire/共同通信イメージズ 不敵で超然として日本ではマシュー・マコノヒーと表記されることが多いが、この人の名前の発音は「マコナヘイ」に近い。予告篇やアカデミー賞授賞式の映像を見ながら、ちょっと耳をすましてみれば気づくはずだ。修正したほうがよいと思う。 それはさておき――。 マシュー・マコナヘイは、大股の歩みを止めない。デビュー作『バッド・チューニング』(1993)で、不思議なスケールの大きさを感じさせ

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スターは楽し ジム・キャリー|芝山幹郎

スターは楽し ジム・キャリー|芝山幹郎

ジム・キャリー ©AF Archive/Universal/Mary Evans Picture Library/共同通信イメージズ ナンセンスが噴火する1990年代の中盤、ジム・キャリーが噴火した。爆発というより噴火。一過性の破裂ではなく、溶岩の連続的な噴出。94年だけでも『エース・ベンチュラ』、『マスク』、『ジム・キャリーは Mr.ダマー』とヒット作が3本公開され、そのあとには、『ライアーライアー』(1997)がつづいた。止まらない感じがした。 これはなんだ? と

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スターは楽し オリヴィア・デ・ハヴィランド|芝山幹郎

スターは楽し オリヴィア・デ・ハヴィランド|芝山幹郎

オリヴィア・デ・ハヴィランド ©AF Archive/Mary Evans Picture Library/共同通信イメージズ 悪夢に親しみやすい美女 オリヴィア・デ・ハヴィランドの名を聞いて、すぐさま顔を思い出す人は少ないかもしれない。初期の代表作『ロビンフッドの冒険』が1938年、『風と共に去りぬ』が39年の公開だから、すでに80年以上の歳月が流れている。 そのデ・ハヴィランドが、2020年7月、104歳の高齢で亡くなった。同年生まれのカーク・ダグラスが他界して5

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スターは楽し「アンナ・カリーナ」|芝山幹郎

スターは楽し「アンナ・カリーナ」|芝山幹郎

アンナ・カリーナ(写真・ROGER_VIOLLET) まぶしく弾けるソーダの泡 ダークヘア、ややぱらついた前髪、濃いアイライン、ニーソックス、格子柄のベレー。そして、牝鹿のような眼。 アンナ・カリーナの顔や姿は、すぐに浮かび上がる。記憶を遡るまでもない。 1960年代、カリーナの名を聞くだけで浮き足立ったガキは、私も含めてそこらじゅうに転がっていた。ゴダールとカリーナ。そう、ジャン=リュック・ゴダールとアンナ・カリーナは、当時最強で、最もクールなカップルだった。

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スターは楽し エディ・マーフィ|芝山幹郎

スターは楽し エディ・マーフィ|芝山幹郎

エディ・マーフィ 「複数の色彩」という鉱脈見終わった直後は、「エディ・マーフィが、久しぶりに鉱脈を見つけたな」という程度の印象だった。 ところが、妙に舌に残る。面白さがじっくりと煮込まれていて、後味がよい。舞台になった1970年代のロサンジェルスを、私自身が思い出したためだろうか。あの時代特有の「楽しい猥雑さ」や「笑えるはしたなさ」がそっくり再現されていたのは望外の収穫だった。いまの私は、『ルディ・レイ・ムーア』(2019)に奇妙な愛着さえ覚えている。 ムーアは実在

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