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『文芸ピープル 「好き」を仕事にする人々』著者・辛島デイヴィッドさんインタビュー

『文芸ピープル 「好き」を仕事にする人々』著者・辛島デイヴィッドさんインタビュー

ここ数年、英語圏で日本文学の需要が高まっており、なかでも女性作家の作品が注目を集めているという。日本文学の英訳に携わる翻訳家、編集者、書店員、文芸イベント運営者といった「文芸ピープル」の声を聴き、英語圏における日本文学の現在を明らかにしたのが本書だ。 著者の辛島氏は1979年「東京生まれ、埼玉育ち」で、イギリス人の父と日本人の母を持つ。日本のインターナショナル・スクールからアメリカの大学、イギリスの大学院へ進み、現在は早大准教授を務める。自身も金原ひとみ『蛇にピアス』などを

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『その扉をたたく音』著者・瀬尾まいこさんインタビュー

『その扉をたたく音』著者・瀬尾まいこさんインタビュー

瀬尾まいこさん 写真:内藤貞保 29歳、無職、ミュージシャンを夢見る宮路くんが物語の主人公だ。親からの仕送りで生活をしながら、日々無為に過ごしている。その彼が老人ホームを慰問し、介護士の渡部くんが吹くサックスを耳にして物語が始まる。 瀬尾まいこさんは、打ち合わせてから約3カ月という短期間でこの長編をほぼ書き上げた。「2019年の本屋大賞を受賞した直後で、大勢の人から誉められて気持ちがよかったのかも」と笑う。 老人ホームを舞台にしたのは、自身が中学校で働いていた時にた

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『大阪』著者・岸政彦さんインタビュー

『大阪』著者・岸政彦さんインタビュー

社会学者、作家として活躍する岸政彦さんと、作家の柴崎友香さんが、大阪について書いたエッセイが6篇ずつ収められている共著だ。 「この本は編集者の提案で生まれたのですが、ひとりは大阪に来た人、ひとりは大阪を出た人の組み合わせなのです」 1973年に大阪で生まれた柴崎さんは2005年に東京へ移った。本書では生まれ育った街、ちかくの商店街、中学生のころから通っていた心斎橋の個性豊かな店などについて書いている。 一方、岸さんは大学進学のため1987年に地元を離れて大阪へ来た。本書

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『ロッキード』著者・真山仁さんインタビュー

『ロッキード』著者・真山仁さんインタビュー

『ハゲタカ』シリーズなどで知られる人気作家・真山仁さんがロッキード事件を扱ったノンフィクションだ。「なぜ小説家がノンフィクションを書くのか?」「なぜ今さらロッキードなのか?」という誰もが抱く疑問も、600頁に迫る“超弩級”の大著を読み終えた後には、自ずと氷解していることだろう。関連書籍がすでに無数にあるなかで“全体”を初めて俯瞰したことで“事件の真相”に迫った書だ。これも、むしろ当時の時空間から“距離を置いた今”だからこそ、“ノンフィクション専門の作家ではない”からこそ成し得

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『ルポ トラックドライバー』著者・刈屋大輔さんインタビュー

『ルポ トラックドライバー』著者・刈屋大輔さんインタビュー

「キツイ」、「汚い」、「危険」なのに「稼げない」――。そんな「4K職場」と揶揄されるトラックドライバーの助手席に「同乗取材」した労作である。 ともすれば“やんちゃ”なイメージでくくられがちな彼らだが、本書では、還暦を前に東京―名古屋―大阪間を週に3往復する長距離ドライバーや、高級車「レクサス」のオーナーを夢見て個人向けの軽トラ配送業に転身した元印刷会社の管理職など、十人十色の生き様を描く。 刈屋氏は約30年前に佐川急便のアルバイトを始め、物流専門紙などを経て物流ジャーナリ

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『サコ学長、日本を語る』著者・ウスビ・サコさんインタビュー

『サコ学長、日本を語る』著者・ウスビ・サコさんインタビュー

ウスビ・サコ氏 「コロナは社会を見つめなおす良い機会になりました。そんな時、私みたいに日本以外で生まれ育った人間が、客観的な意見を提示することも必要ではないかと思ったのです」 京都精華大学の学長を務めるウスビ・サコさんは、西アフリカのマリ共和国の出身。大学時の中国留学をきっかけに日本にも興味を持ち、1991年に移り住んだ。初の自叙伝となる『サコ学長、日本を語る』は、サコさんが日本社会についてコミカルに語ったものだ。 来日したサコさんが特に驚いたのは、「おない」文化だ

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『スター』著者・朝井リョウさんインタビュー

『スター』著者・朝井リョウさんインタビュー

本物とは、頂点とは何か。誰もがその名を挙げる、紛うことなき“スター”は、まだこの社会に存在するのだろうか。 「3年ほど前からテレビをほとんど観なくなって、YouTubeで人がごはんを食べる動画ばかり観るようになりました。すると自分にとって、芸能人やテレビのきちんとしたセット、番組のお約束のような流れが本当に必要だったのか、疑問を持つようになったんですよね。テレビが上でYouTubeが下、そんな構図はもうないし、そもそもこれまで自分は何を見ていたのか、何を必要としていたのかと

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『東京、コロナ禍。』著者・初沢亜利さんインタビュー

『東京、コロナ禍。』著者・初沢亜利さんインタビュー

東日本大震災や北朝鮮、イラク、沖縄などをテーマに写真集を出してきた写真家の初沢亜利さんが、新型コロナウイルスの感染拡大で一変した東京の街並みやそこに生きる人々のスナップ写真を収めた『東京、コロナ禍。』を出版した。初沢さんは6歳から東京に住み続けているが、これまで慣れ親しんだ土地について「あまり真剣に撮ってこなかった」という。 「東京人は東京を撮るべきだという思いは数年前からずっとあったんです。ただ、北朝鮮やイラクや沖縄とは違い、東京という都市を撮るのは自画像を撮るような感覚

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『吃音 伝えられないもどかしさ』著者・近藤雄生さんインタビュー

『吃音 伝えられないもどかしさ』著者・近藤雄生さんインタビュー

近藤雄生氏 「吃音」とは言葉に詰まる、つまり、どもる症状のことを言う。世界中のどの国を見ても、100人に1人の割合で吃音を持つ人がいる。著者の近藤雄生さん自身も、幼い頃から吃音に悩まされた。 「言葉を意識すると、発することが難しくなるんです。ファーストフード店に行って『てりやきバーガー』を頼もうとしても、『て』がなかなか出てこない。『えっと……』と時間を稼ぎながら、ぱっと言えそうな言葉を探し、食べたくなくとも『チーズバーガー』を頼んだりするんです。一番辛かったのが『予

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『実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実』著者・秋山千佳さんインタビュー

『実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実』著者・秋山千佳さんインタビュー

 広島市基町(もとまち)の自身が住む市営アパートを拠点として、40年近く非行少年らに無償で手料理を毎食提供してきた、元保護司の“ばっちゃん”こと中本忠子(ちかこ)さん。今まで描かれなかった、ばっちゃんの活動の本当の理由を、足掛け3年にわたる取材で紐解いたのが本作だ。 「中本さんに初めて会ったとき、緊張気味の私に、『まあまあ、どうぞ召し上がれ』と、すじ肉入りのカレーを出してくださり、気持ちがほぐれました。私は貧困問題などの取材を通じて、家庭環境に難があり学校からもこぼれ落ちた

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