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短歌|大久保春乃

定命鎧戸ははたりと落ちき玉の緒のふいにしぼめるそのゆふつかた 上げ下げ窓を音なく閉せば玻璃に浮くたれもかれものいとしき面輪 もとほるは猫の魂とも桃畑のいまだかそけき桃の魂とも 経筒のごとき姿の花の笠暮れ初む路にすつくりと立つ 白猫の寄り来てはやはらかく去るこなたに白き闇を残して はじまりはひとつ鎖目 かぎ針の先よりふつとこの世に生れき 定命の櫛目を通す青き泡のしぼみてゆける夕べの浜に

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