文藝春秋digital

武田徹の新書時評|音楽と社会のあり方を考える

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 2020年はベートーヴェン生誕250年に当たり、新書でも関連書が揃った。 中野雄『ベートーヴェン』(文春新書)は罵声と殴打で息子を鍛えた父など家族の紹介から始まり、名曲『英雄』『運命』も初演では失敗続きだった天才音楽家…

佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『日本共産党の研究』立花隆

日本共産党は「普通の政党」なのか? 本誌12月号掲載の拙稿「権力論――日本学術会議問題の本質」に関して、11月19日、「しんぶん赤旗」(以下「赤旗」)が、「フェイクの果ての「赤旗」攻撃/菅官邸を擁護する佐藤優氏の寄稿」(三浦誠社会部長署名)と題し、評者を名指しで非難する記事を掲載した。…

『ルポ トラックドライバー』著者・刈屋大輔さんインタビュー

「キツイ」、「汚い」、「危険」なのに「稼げない」――。そんな「4K職場」と揶揄されるトラックドライバーの助手席に「同乗取材」した労作である。 ともすれば“やんちゃ”なイメージでくくられがちな彼らだが、本書では、還暦を前に東京―名古屋―大阪間を週に3往復する長距離ドライバーや、高級車…

本上まなみさんが今月買った10冊の本

冬の楽しみ 『フジモトマサル傑作集』に、私はこの冬どれだけ楽しませてもらったことだろう。安全安心な自宅のソファで毛布にくるまり、どこに行かなくても、夜道を濡らす雨の匂いを嗅いだり、凪の海で小舟に揺られているような気持ちになれるのです。 漫画家、イラストレーターの故フジモトさんが描…

池上彰さんの「今月の必読書」…『毒殺 暗殺国家ロシアの真実』

ソ連時代から続くロシアの“見せしめ” かつてのソ連には言論の自由がなかったけれど、いまのロシアには「言論の自由」がある。ただし、その後の生命の保障はない。 こんなブラックジョークがあるのが、プーチン政権下のロシアです。2020年8月、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が旅客機…

梯久美子さんの「今月の必読書」…『ルポ入管 絶望の外国人収容施設』

隠されてきた非人間的な長期収容の実態 長崎県の大村入国管理センターで餓死者が出たのは2019年6月のことだ。亡くなったのはナイジェリア人の男性で、長期収容に抗議するハンストの末の死だった。 本書を読んで、この報道に接したときに受けた衝撃を思い出すとともに、背景にある日本の入管収容制度…

佐久間文子さんの「今月の必読書」…『コラムニストになりたかった』

わくわくする、が人生の決め手 その人の書いたもの読みたさに雑誌を手に取らせる連載というのがいくつかあって、私にとっては、時折、タイトルを変えながら「サンデー毎日」で30年以上続いている、中野翠さんの「満月雑記帳」だ。 その中野さんが、フリーランスのライターとなり、コラムニストになる…

出口治明さんの「今月の必読書」…『教養としての「中国史」の読み方』

気鋭の学者による「君子の交わり」に向けた道標 現在、アメリカと中国の対立が激しさを増している。日本の立場はまことに辛いものがある。アメリカの機嫌を損ねない範囲で中国と仲良くしなければ、日本の繁栄は覚束ないからだ。加えて、中国は理解がなかなかに難しい隣国ときているから、尚更である。…

原田マハさんの「今月の必読書」…『最後のダ・ヴィンチの真実』

アートの価値が上がる舞台裏 昨年10月24日から今年2月24日まで、ルーヴル美術館で「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」が開催された。 2019年はレオナルドの没後500周年ということで、同展は世界中のレオナルド研究者が10年かけて共同リサーチしてきた結果のお披露目も兼ねており、また、どこぞの美術館の…

中島岳志さんの「今月の必読書」…『双葉山の邪宗門』

敗戦で「大義」を失った彼は、混乱に陥った 1947年1月、金沢に本拠地を据えた新興宗教団体「璽宇(じう)」に警察の強制捜査が入った。いわゆる璽光尊事件である。このとき多くの人が驚いたことがあった。教祖を守ろうとして警察の前に立ちはだかったのが、あの元横綱の双葉山だったのだ。 双葉山は1…