文藝春秋digital

本郷恵子さんの「今月の必読書」…『テレビの荒野を歩いた人たち』

「面白そう」「やっちゃえ」黎明期を知るレジェンドたちの証言 かつてテレビが生活の中心だった時代があった。テレビは未知の世界に通じる窓で、新しいこと・楽しいこと・素晴らしいことがいっぱい詰まった魔法の箱だった。1953年2月にNHKが本放送を開始、8月には日本テレビが最初の民放テレビ局とし…

片山杜秀さんの「今月の必読書」…『マーシャル・プラン 新世界秩序の誕生』

帰りたかったのに、帰れなかった米国 米国は帰りたかった。第二次世界大戦が済んだ欧州から一刻も早く手を引きたい。建国以来そういう国なのだ。本書は1796年秋のワシントン大統領の辞任演説から始まる。彼は言った。米国は欧州とあまりに異質なので、関わらない方がよいと。大戦の当初、米国民の態度…

角幡唯介さんの「今月の必読書」…『地下世界をめぐる冒険 闇に隠された人類史』

光のない世界に託した人間の意外な姿 20年以上前に大学探検部の学生だった頃、洞窟好きの後輩が奇抜な計画書を出したことがあった。その後輩は心理学にも興味をもっており、洞窟の底の暗闇のなかで長時間過ごすことで自らの意識が如何に変容するのか知りたいというのである。変人といえば変人だが、本…

角田光代さんの「今月の必読書」…『自転しながら公転する』

苦しくてすがすがしい濃厚なリアリティ 本書の主人公は与野都、32歳。東京で暮らしていたが、今は更年期障害の母親を支えるために実家の牛久に戻り、アウトレットモールのアパレル店で働いている。同じモールの飲食店で働く貫一と知り合い、交際がはじまる。貫一は都の名を知り、「貫一おみやって言っ…

池上彰さんの「今月の必読書」…『その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたち…

閉ざされた実態を明らかにした地道な取材 2017年から#MeToo運動がアメリカで始まり、瞬く間に日本を含む世界各国に広まりました。きっかけは、同年10月、アメリカの「ニューヨークタイムズ」が、ハリウッド映画界の大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインのセクハラを報道したこと。新…

佐久間文子さんの「今月の必読書」…『歴史家と少女殺人事件 レティシアの物語』

加害者ではなく被害者の人生の物語 歴史学者は過去しか扱わない。 本書は、そんな常識を打ち破る。まだ輪郭が定まらず揺れている現在のできごとを徹底調査し、歴史的な文脈の中に置き直し、未来において参照可能なものにする。歴史の可能性を拡げる、刺激的な仕事だ。 原題は「レティシア」。2011年…

梯久美子さんの「今月の必読書」…『帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーから…

軍人は互いをかばいあう高級官僚にほかならない 大和ミュージアム(呉市)館長の戸髙一成氏と、昨年話題を呼んだベストセラー『独ソ戦』の著者である大木毅氏による対談本である。 昭和50年代から6十年代にかけて、旧軍人――将官、佐官クラスだった人たちがまだ存命だった――からじかに話を聞いた…

「一人称単数」を読むと、筋の通らない物語を語りたくなる|岸田奈美

村上作品の感想を書くと、なぜか自分の話ばかりしてしまう 文藝春秋さんから「『一人称単数』の書評をお願いします」と頼まれて、嬉々として引き受けた数分後に、わたしは唸りながら頭を抱えていた。 わたしは4月に刊行された「猫を棄てる 父親について語るとき」で、はじめて村上春樹作品を手にとっ…

飯間浩明の日本語探偵【ど】読書委員として思う どんな本もきっと面白い

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【ど】読書委員として思う どんな本もきっと面白い  2020年から2年間の約束で、読売新聞の読書委員を仰せつかりました。国語辞典の編纂に携わっているので、それなりに本は読めるだろう、と担当者に思われたのかも…

佐久間文子さんの「今月の必読書」…『掃除婦のための手引き書』