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文藝春秋digital

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#短歌

『文藝春秋digital』2022年6月ラインナップ

■会員限定イベント●6月8日(水) ・新庄剛志「薬物使用」の過去 抜き打ち検査で「陽性」も、詳細は伏せられ、その年に引退―― 鷲田康(ジャーナリスト)+本誌取材班 ●6月10日(金) ・プーチンが最も殺したい男の告白 M・ホドルコフスキー(オリガルヒ・石油会社「ユコス」元代表)「ウクライナ侵攻は彼の個人的な動機から始まった」 ・「性暴力」私は負けなかった 卜田素代香(仮名)「暴行後『証拠が残るからシャワーを』と男が強いてきました」 ・新連載 外事警察秘録②「日本赤軍との闘い

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短歌 小佐野彈「永遠の社長夫人への挽歌」

永遠の社長夫人への挽歌永遠の社長夫人として小佐野敏子は逝けり 金の寝床で なべて死はかならず白に帰結することを教へてくるるSkype 正信偈うたふ導師の足元であかあかゆれる退出ボタン 「いつの日か彈ちやんの住む台湾に行つてみたいわ」やつと来れたね 真四角の画面にしんと立ちのぼる伽羅の煙を指もて追ひぬ もし俺がゲイぢやなければいまごろは(おつと、危ない危ない)合掌。 愛用のMacBookの奥底でけふも響いてゐる正信偈

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4

短歌 笹公人「異空間アンプ」

異空間アンプ青春は苦行であると気づくたび眉間を走り抜けてゆく中央線 たましいを歪めるほどの痛みあり太陽系第三惑星の黄昏 肉体なるキグルミ纏い魂は「にんげん」というゆるキャラになる 芳一の書き忘れたる経の字がジェームズの左腕に刻まる 心霊写真を表紙に載せて(野蛮です)『ケイブンシャ恐怖大百科』手提げに戻す 野良猫が子猫を産んだ物置にゲーム&ウオッチが冷えていたんだ 地面から貝塚の気配漂えばパワーショベルでしょべりたきかも

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8

短歌|美村里江

役者の人間摂取ある時のごく個人的心情をオーダーメイドで作る仕事 感情の表現について一家言と思いきや へー、わーっ、なんと! 抜け落ちた12年前の「怒」と「哀」を4月の渋谷で拾って還る 我がことに伝播し支流注ぎ入る役柄の涙本流として ストレスの発散せんと暴挙に出る 独居で一玉白菜買ったった 型破り展開に必要なのは何より強固な常識だったり 流行ってるお店の横で立ち止まり行列の中の人柄を吸う

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6

短歌|寺井奈緒美

旬の7種のフルーツタルトチクチクと言われた歯医者の帰り道 月って汚かったことがない 気づいたら選択画面で食べ終わるリモコン片手のカップ焼きそば したいでしょアイデンティティ確立とか蕎麦屋でカツカレーを頼むとか ショーケースに無数の指紋それほどにフルーツタルトは求められたの 血を絶やす 最後のトイレットペーパーがわたしの番で切れたみたいに 雨で散る運命なんて変えてやる今年の桜はPARCOまで飛ぶ 爪痕がまだ残せない皆さんに朗報です 雪が降ります

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4

短歌|三田三郎

絶望の作法番号で呼ばれたければ刑務所より市役所の方が手っ取り早い いつの間にか十二指腸に憂鬱が棲みついてまだ成長している 自らの尻を叩けば励ましつつ励まされつつ体は進む この道は駐車場にしか繋がっていないから花も咲かなくていい 失礼ですが、と切り出したなら本当に失礼なことを言ってください 空き瓶を洗って部屋の隅に置く それは墓標の予約でもある ぬいぐるみは絶望しないがぬいぐるみと一緒に絶望することはできる

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16

短歌|堂園昌彦

情緒五月の椅子の背に飛び乗って悲しみをひととき途絶えさせる雀よ 蟻が蟻を運ぶようだね昼日中手荒れの花畑荘厳に 彼女はいつも曼荼羅のようになりたくて戸棚に花を匿す毎日 こころはいつかあなたに殴り殺される/この場を借りて言うお礼たち 春先の花溢れ出る指先のみんな気持ちの化け物だから 鳩が飛ぶ、ことにそれほど意味はなくひかり泡だつ街を見ていた 春の最中に屏風に描かれ動けない小さな雀、すずめ、雀よ

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16

短歌 生方たつゑ・佐佐木幸綱・俵万智 百周年記念傑作選

生方たつゑあこがれを追ひつめてゆくかたちにて草焼けば草の炎は赤し 蚕豆の花ゆれてゐしふるさともわが母も夢に見ることはなし (1978年3月号) 佐佐木幸綱 あかあかと炎は立てり戦争も恋も政治も挑発として 背振山地の起伏を移る夕日かげ人死して移る歴史とは何 (1999年1月号) 俵万智オンライン授業垣間見してみれば源氏が女を垣間見ており 正しさが大暴落をする時代マスクの中に何か隠して (2021年3月号)

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10

短歌 本多真弓

正解は百二十位個室にて文藝春秋を読む人よ お茶を汲んだことありますか をぢさんやおぢいさんにはない石がをばさんといふ語に付随する 高木彬光おもしろいけど今読むとをんなのひとがすごくをんなだ ぶらさがるものぶらさげてゐるひとにぶらさげてゆくつらさもあらむ わらはらも実在したいものよなう オフィスにはひるゆふひはきれい クイズです。日本は世界百五十六ケ国中何位でせうか 荷車の轍のあとを辿る日々をんながひとになるまでを見よ

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10

短歌 谷川電話

抱擁と副葬品浴槽に泡を降らせる降らせても野蛮になることのない泡を 背もたれに一枚の羽根 わかりやすい天使は乗客に見当たらず みずうみにきみと浮かんでそういえば一瞬も永遠もいらない 銀色のコーヒーミルに抱擁を映そうとして踏んだクッキー 薄暗いベランダにいて幽霊の恋人たちと呼ばれるかもね 水槽を光と影を飼育するために窓辺に置いてそれから 音楽はきみの体のその泡を副葬品にしていいですか

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7

短歌|大久保春乃

定命鎧戸ははたりと落ちき玉の緒のふいにしぼめるそのゆふつかた 上げ下げ窓を音なく閉せば玻璃に浮くたれもかれものいとしき面輪 もとほるは猫の魂とも桃畑のいまだかそけき桃の魂とも 経筒のごとき姿の花の笠暮れ初む路にすつくりと立つ 白猫の寄り来てはやはらかく去るこなたに白き闇を残して はじまりはひとつ鎖目 かぎ針の先よりふつとこの世に生れき 定命の櫛目を通す青き泡のしぼみてゆける夕べの浜に

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6

短歌|寺田信子

薔薇を仰ぐ壁面に薔薇を咲かせるお宅から束でいただく今年二度目の この町のばらの名所のような家自転車止めて仰ぐ人あり からくりの玩具のように足動く子犬に会えり人に連れられ 西からの直射日光に照らされて主を待つか自転車の群 涸びたる花びら指で払いやる散るのが苦手なゼラニウムの花 ひな子という同級生ありしこうして健在ならばやっぱり米寿 お釣り貰い帰りかけるを止められて肉の包みをぬっと渡さる

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22

短歌|小林理央

金魚すくいカレンダー埋めて生きてるフリをする思い通りにいかない日々を どうしようもなく夏になるわたしには何も操れないことを知る 虚無と向きあえる自分になりたくて聴いているのはマカロニえんぴつ 学生でいられる日々を数えてるベタベタしてるカラオケの床 幸せな夢を見たくはない 今が不幸せだと思ってしまう かき集め生きているんだ日本語を金魚すくいのようにやらかく 鳥になったあの人ならばコロナ禍をどんな素敵に詠うのだろう

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短歌|平岡直子

白夜弟の婚姻届けに署名したわたしはサインポールにみえる? オリンピック、虫の頭に詰まってるいろとりどりの紙屑をみて 地下街はしばらく続く 太い線 細い線 目に飛び込んでくる バレリーナたちの手足が暗がりでからまりあっているビオトープ でもわたし途中で寝ちゃったんですよ 会話はいい霧とわるい霧 月面にでこぼこがある月面にでこぼこがあるきみに噛みつく 紫陽花のほかのすべてがモノクロのわたしの人生は点つなぎ

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