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【新連載】ハコウマに乗って|ふしぎなおもち|西川美和

【新連載】ハコウマに乗って|ふしぎなおもち|西川美和

ふしぎなおもち 広島に住む大正14年生まれの伯母は、物忘れが多くなった。 子供がおらず、大学で英語を教えていた夫は20年前、夕餉の卓でおちょこ一杯の日本酒を「美味しいですねえ」と舐めながら眠るように逝き、以後は小さな戸建に一人で暮らしている。 超がつくほどの綺麗好きで、帰省したおり手土産を持って訪ねても、台所の調理台、廊下、家具調度品、何もかもがピカピカに磨かれて、玄関には季節の花が生けられている。90を過ぎても足腰は強く、私が東京に戻ろうとするのを見かけると、ポチ袋に

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