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池の眺めと善悪|町田康

文・町田康(作家) 私方の庭の東側には池が掘ってあって、池には錦鯉が放してある。餌をほおってやると競ってこれを食らう。けれども水の中のことで動きがゆっくりしていて、あまり競っているように見えない。 そんなことで鯉は私方の池で平和に暮らしていたのだけれども、先日、この池に変が起きた。 すぐ側を流れる幾本もの渓川から無数の蝦蟇が押し寄せてきて池を埋め尽くしたのである。 そしてその振舞たるやまったく以て傍若無人で、元から居た鯉を押しのけて縦横無尽に泳ぎ回る。或いは底に沈んで

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