文藝春秋digital

ほどよく離れて|小島慶子

著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、小島慶子さん(エッセイスト・タレント)です。 ほどよく離れて お互いに良くしてあげたいと思っていても、近くにいるとしんどいので、適度に離れている方が良い関係というのがあります。母と私はそれです。占い好きな母に言わせればそれは私が…

わたしはわたし|東山彰良

著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、東山彰良さん(作家)です。 わたしはわたし 両親が広島大学に留学していたせいで、台北の祖父母の家に5歳まで預けられていた。 そのせいだろう、どんなに記憶の底をさらってみても、そのころの父に関する記憶がない。父のことで思い出せるい…

スターは楽し 三國連太郎|芝山幹郎

三國連太郎 写真:共同通信社 快楽の記憶を上書きする人 1960年代の後半、私が青二才だったころ、三國連太郎は「狂気と妖怪」の代名詞で、「悪徳」や「猛毒」の権化だった。野性や謎や色気という言葉を口にするたび、彼の名はいつも引合いに出された。『飢餓海峡』、『にっぽん泥棒物語』(ともに…

本郷恵子さんの「今月の必読書」…『テレビの荒野を歩いた人たち』

「面白そう」「やっちゃえ」黎明期を知るレジェンドたちの証言 かつてテレビが生活の中心だった時代があった。テレビは未知の世界に通じる窓で、新しいこと・楽しいこと・素晴らしいことがいっぱい詰まった魔法の箱だった。1953年2月にNHKが本放送を開始、8月には日本テレビが最初の民放テレビ局とし…

詩|銀色夏生

草陰 もう少しだけ見ていたい あなたの姿 あなたの話すこと あなたはどういう人で 何をしようとしているのか あなたは私をどうしたいの 私はあなたをどうしたいの あなたを知ろうと思うことはきっと 私をもっと知ることになる だから怖いことだけど そうしたいと思ったの (202…

俳句|柚木紀子

火と人と より 内外(うちと)のひかり 凍(い)つる雲 冬北斗 乳子(ちご)われ乳子生み 乳房失(う)し うたふ薔薇 匍匐(ほふく)の蜂や 秋まひる 火映(くわえい)火口上空 晨夜(しんや) しくらめん 「老人と森」と謳(うた)はな 緑夜なる 蹤(つ)いてゆく 光の化身 霧氷林(…

短歌|永田和宏

この夏の死 限りなくこの夏に死にしクマゼミのなかのひとつが地にもがきゐる この辺でもういいだらうと現(うつ)し身(み)の抜けたる痕(あと)が幹にすがれる 九〇万とふ死の数とほうもなき数の その数だけの悲しみをこそ “It's people, not number”テドロスの言葉はすでにとほく忘れつ 笑…

保阪正康『日本の地下水脈』|「反体制運動の源流」

昭和史研究家の保阪正康が、日本の近現代が歩んだ150年を再検証。歴史のあらゆる場面で顔を出す「地下水脈」を辿ることで、何が見えてくるのか。今回のテーマは「反体制運動の源流」。対露強硬派が支持を集める一方、社会主義運動は弾圧され、地下水脈化してゆく——。/構成・栗原俊雄(毎日新聞記者…

「こんなはずじゃなかった」とボヤいた菅首相の“党内基盤の弱さ”

早期解散か、都議選ダブルか——。「解散するなら今でしょ!」。好条件が揃う中でも菅は早期解散に踏み切らない。高支持率でスタートした新政権の内憂外患。/文・赤坂太郎 「こんなはずじゃなかった」 ひとつの妖怪が永田町を徘徊している。「解散風」という妖怪が——。 マルクスらが生んだ共産主…

内モンゴルが危ない|藤原正彦「古風堂々」

文・藤原正彦(作家・数学者) モンゴル草原はゴビ砂漠で南北に二分され、北は外モンゴル、南は内モンゴルと呼ばれる。17世紀末にはともに清国の支配下となったが、外モンゴルはソ連の衛星国ながら1924年にモンゴル人民共和国として独立した。冷戦終了後には現在の民主主義国、モンゴル国となった。 …