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夫ピート・ハミルとの33年|青木冨貴子

夫ピート・ハミルとの33年|青木冨貴子

文・青木冨貴子(ジャーナリスト・作家) 猛威を奮ったニューヨークのコロナ禍が少し落ち着きを見せた8月5日明け方、病院からの電話で目を覚ましたわたしはそれが夫の最期を告げるものとは思わなかった。 長い間、糖尿病を抱えていたピートは6年前に急性腎不全で入院し、心臓には4つのステントが入り、ペースメーカーも付けられ、歩行器なしには歩けなくなっていた。85歳という高齢のうえ、3年前からは週3回の人工透析が必要になっていた。 「ぼくの車椅子を押してくれるかい」 『ニューヨーク・

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