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共助が支えた江戸|安藤優一郎

共助が支えた江戸|安藤優一郎

文・安藤優一郎(歴史家) 今から200年ほど前の享和2年(1802)3月、江戸の町でインフルエンザが大流行した。前年の暮に、オランダ船や中国船が唯一入港できた長崎から感染がはじまり、日本を縦断する格好で世界最大級の人口を抱える江戸にも感染が広がったのである。 それまでも江戸では麻疹などが流行して多数の犠牲者も出ていたが、当時の医療水準では有効な対策が取れず、幕府としても流行の自然収束を待つしか手立てがなかった。 そのうえ、疫病が流行すると経済がまわらなくなり、不況に陥っ

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