文藝春秋digital

隣人への想い|藤原正彦「古風堂々」

文・藤原正彦(作家・数学者) 芭蕉の最晩年の句に、「秋深き隣は何をする人ぞ」というのがある。晩秋の夜、誰かも分からない隣の人に想いを馳せる、という人間的ぬくもりのこもった名句である。日本の生んだ大数学者の岡潔先生は、この句に表われた「自分以外のものへのそこはかとないなつかしさ」こ…

ほんの小さな思い遣り|塩野七生「日本人へ」

文・塩野七生(作家・在イタリア) アメリカ合衆国の大統領に決まったバイデン下の主要官庁のトップには、軒並みという感じで女たちが登用されるらしい。だがヨーロッパでは、EU政府の首相、ヨーロッパ中央銀行の長、この時期の当番国であるドイツの首相と、すでに3人ともが女で占められているのだ。 …

クイズ「私は誰でしょう?」小さな大物

【ヒント】 占い師から転身。痛快なストーリーでヒットを連発する脚本家といえば? * 書く楽しみを覚えたのは小学生の時だった。 「1歳の頃から、寝る前に私が話したことを母がノートに書き取ってくれました。金歯に憧れて、『歯をピカピカに磨いて金色にしよう』とか(笑)。小学校に上がる頃、…

目・耳・口|愛でて、味わって。全国の逸品たち

七味唐辛子の老舗による 新感覚のスパイス・チョコレート 長野県善光寺の老舗七味唐辛子店『八幡屋礒五郎』が手掛ける、スイーツブランドKongen Sweetsの『スパイス・チョコレート』(1枚、600円)。七味唐辛子で培ってきた技術を生かして焙煎したカカオや、美しい色合いのルビーカカオ、ホワイトチョコ…

筋肉は買えない|はな

文・はな(タレント・モデル) 子供の頃は、100円を片手に駄菓子屋に駆け込めば、買いたいものが全て手に入りました。すもも、ソースいか、あんず、スーパーボール。シルバー色にキラキラ輝く、100円玉。紙幣に描かれた聖徳太子よりも、伊藤博文よりも、誰よりも強い光を放ちながら、私が駄菓子屋を彷…

イタリアンシェフ・片岡護の恩返し「若いシェフが活躍できる環境を」

片岡護(かたおかまもる・イタリアンシェフ) 東京を代表する名店「リストランテアルポルト」のオーナーシェフ片岡護(72)の人生を決めたのは、ある外交官の一言だった。 「ミラノにいらっしゃい」 高校卒業後、浪人生活を送っていた折、外交官の金倉英一氏から総領事館付きの料理人として誘われ…

詩|服部みれい

ラブレター とつぜん届いたラブレターは とてもいびつな エクスペリメンタルミュージックであった 愛? それとも地中からのあたらしい衝動? わたしからの返信は YouTubeもSNSもつかわない 空中にある時空に そっと愛を飛ばす そんな未来的なやりかたです! 夢に乗って さあ、どこへいく? 今日も…

時空旅行の随伴者|星野博美

文・星野博美(ノンフィクション作家) 『旅ごころはリュートに乗って』(平凡社)という本を昨年の秋に上梓した。 リュートとはヨーロッパの古楽器で、洋梨を縦に割ったような形状の、棹が90度に折れ曲がった撥弦楽器である。先祖はアラブ世界のウードで、東へ渡って琵琶となり、西へ渡ってリュート…

俳句|岡田一実

峰巒 水音がひかりと見えて枯芒 水の面の落葉の層のほぐれくる 午後の日を鋭(と)き鳥ごゑや山眠る 餅搗の音に峰巒(ほうらん)のたたなづく 読初の文字の四角く組まれをり 寒禽の屢(しば)鳴く嘴の夥し 日脚伸ぶ手指を隈なく濡らす度

横山やすしさんと渡哲也さん|西川きよし

文・西川きよし(タレント) 西川氏 2020年10月に文化功労者に選出されました。漫才の分野では初めてです。本当に大変驚きました。漫才は平安時代に始まった太夫と才歳という二人一組の芸が原型といわれて歴史は長いですが、歌舞伎や落語などたくさんの芸事がある上方では歌や舞の合間をつなぐ存在で…