文藝春秋digital

「拝察」発言は驚くに値しない|辻田真佐憲

★前回の記事はこちら。 ※本連載は第7回です。最初から読む方はこちら。  天皇は憲法を超越した存在でもある。その事実があらためて突きつけられた。ほかでもない、宮内庁長官の「拝察」発言をめぐる騒動のことである。  西村泰彦長官は、6月24日の定例記者会見で、東京五輪の名誉総裁も務める天皇が、その開催によって新型コロナウイルスの感染が拡大するのではないかと懸念し、心配していると「拝察しております」と述べた。 

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6割の包摂をめざす議論を|辻田真佐憲

★前回の記事はこちら。 ※本連載は第6回です。最初から読む方はこちら。  人権や平等を高唱しながら、実は特定のひとびとの人権や平等しか擁護していない。そんなリベラルの欺瞞を突く声を昨今よく聞く。右翼によるリベラル攻撃の常套句か。かならずしもそうとは言い切れない。

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ポピュリスティックな「五輪反対」では意味がない|辻田真佐憲

★前回の記事はこちら。 ※本連載は第5回です。最初から読む方はこちら。 「辞退してほしい」「反対に声をあげてほしい」。この要求はわれわれの想像以上に、五輪選手にとって攻撃的に響くのかもしれない。  先日、競泳日本代表の池江璃花子によるツイートが話題になった。彼女のインスタグラムのダイレクトメッセージやツイッターのリプライに、先述のようなメッセージが寄せられ、なかには「非常に心を痛め」るものも含まれていたのだという。

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SNS炎上と正義のワナ|辻田真佐憲

★前回の記事はこちら。 ※本連載は第4回です。最初から読む方はこちら。 『応仁の乱』などの著作で知られる、歴史学者の呉座勇一がツイッター上の発言で大炎上し、謝罪に追い込まれ、NHK大河ドラマの時代考証を降板した。

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フランス歴史界でも模索されていた「トンデモ史観と専門主義の中間」|辻田真佐憲

★前回の記事はこちら。 ※本連載は第3回です。最初から読む方はこちら。  『思想』3月号の特集「ナショナル・ヒストリー再考」を読んで、大いに刺激を受けた。ここで示されているフランスの現状を、ざっくり要約すればこうだ。評論家やジャーナリストが書いた愛国主義的な歴史本(『フランス人であることの誇り』『フランスの魂』『情熱的なフランス史』など、いかにもなタイトルが並ぶ)が広く受け入れられている。そのいっぽうで、専門化と細分化が進んだ歴史研究の成果は、ますます一般読者に届かなくなっ

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不毛な評論家叩きはそろそろ卒業せよ|辻田真佐憲

★前回の記事はこちら。 ※本連載は第2回です。最初から読む方はこちら。  評論家叩きは、SNS的言論の悪弊のひとつである。具体的に言えば、たとえば池上彰や佐藤優などといった著名人の発言を細かくチェックして「間違いだらけ!」と叩くことが、そこでは“知的”だと褒めそやされている。  しかし、少なからぬひとが薄々気づいているように、このような粗探しは、かならずしも公共的とは言いがたい。なぜならそれは、短期的に知識をひけらかすことにはなっても、長期的に社会をより良い方向に動かし、

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東京五輪「中止」を前に、内なる「戦前」に自覚的であれ|辻田真佐憲

 いまこそ戦前を参照するべきときだ。その思いが日増しに強まっている。ほかでもない、新型コロナウイルスの感染拡大で、懲役刑の導入など、本格的に私権制限の枠組みが検討されつつあるからである。  気になるのは、巷間叫ばれているロジックだ。「ひとがこんなに亡くなっている」「現場はこんなに苦労している」「あと少しだけの辛抱」。なるほど、このような発言は、短期的・個別的に見れば正しいかもしれない。医療従事者の労苦は察するに余りある。だが、これらはあまりに戦時下のスローガンや美談に似ては

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