文藝春秋digital

【連載】ハコウマに乗って|トンネルをぬけると|西川美和

トンネルをぬけるとこれだけ言われているのに、私は東京から旅に出た。無自覚に菌を撒き散らすやつ。ルールを無視して公序良俗を乱すやつ。お前みたいなのがいるから病床が逼迫し、ズルズル収束せず、経済も悪化――そうかもしれぬ。そうかもしれぬが……と思いつつ新幹線に飛び乗った。 2月に封切り…

【新連載】ハコウマに乗って|ふしぎなおもち|西川美和

ふしぎなおもち 広島に住む大正14年生まれの伯母は、物忘れが多くなった。 子供がおらず、大学で英語を教えていた夫は20年前、夕餉の卓でおちょこ一杯の日本酒を「美味しいですねえ」と舐めながら眠るように逝き、以後は小さな戸建に一人で暮らしている。 超がつくほどの綺麗好きで、帰省したおり手…

【新連載】ハコウマに乗って|あとすこしほしい|西川美和

あとすこしほしい 今号からの新参です。読者の方には耳慣れないと思われるタイトルをつけたので、その説明から。 「ハコウマ」というのは生きた馬ではなく、演劇の舞台や映画の撮影現場で使われる、ベニア合板などで作られた木製の箱のことをいう。「馬」は踏み台を意味し、「箱馬」と書くようである…