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岸惠子《一本の鉛筆があれば……》

文・岸惠子  (女優) 拙著『岸惠子自伝』を上梓する時、タイトルが面映ゆかった。『岩波書店』と編集にたずさわった旧友が決めて下さったのだが……。 《岸惠子なんて麗々しく名乗ったって、誰が知るかよ!》と羞恥心を募らせた。けれど、好意的な書評を沢山頂いて、こんどは嬉しくなるという生来のおめでたさでアタマがごちゃごちゃと忙しくなった。そうしたある日、私は書斎を出て、両親が住んだ築90年近い古びた母屋の茶の間へ行きTVの前にだらしなく座った。点けた画面に現れたのは美空ひばりさん。

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