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大相撲新風録 髙安|佐藤祥子

大相撲新風録 髙安|佐藤祥子

髙安(茨城県土浦市出身、田子ノ浦部屋、31歳) 届かなかった悲願。恩返しの日はいつ? 大相撲春場所は、主役の座を照ノ富士に奪われた。一時は序二段まで番付を落としていた元大関照ノ富士が、3度目の賜杯を抱き、21場所ぶりに大関復帰を決める快挙を成し遂げたのだ。 12日目までは、同じく元大関の髙安が“主役”だったはず。昨年春場所で前頭に番付を落とすものの、十一月場所からは三役に復帰。両横綱不在の場所が続き、三大関の成績も安定しないなか、小結髙安が狙うは“悲願の初優勝”だっ

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数字の科学 最大のウイルスのサイズ|佐藤健太郎

数字の科学 最大のウイルスのサイズ|佐藤健太郎

サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します。 最大のウイルスのサイズ=2500ナノメートル 全世界の新型コロナウイルス感染者数は、本稿執筆時点で1億2000万人を突破した。実際の感染者数は、その数倍と見積もられる。ウイルスは、わずか1年少々でその数を数億倍にも増やしたのだから、実に恐るべき物体という他ない。 「物体」と書いたのは、細菌とは違い、ウイルスは生物ではないと考えられているからだ。だが、どちらも目に見えないほど小さいし、

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詩|三角みづ紀

詩|三角みづ紀

四月の魚たち デパートの春売り場が ひしめきあい あたらしい時間を探している きみが ぼくが なまぬるい空気のなかで あけたりしめたりして ここは水槽だ ぼくたちは、すでに出会っているので つぎに訪れるものは別れだったりするのだろうか。 ますます口をぱくぱくさせて 酸素を吸って 帰宅したらベッドに横たわり ふたりで沈んでいく つないだ手からほころびはじめて朝にはほつれてしまう 咲きほこる日常が枯れないように目をひらいたまま眠る

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俳句|岡田由季

俳句|岡田由季

雉 スピードの出てゐて窓に雉見えて 橋脚に水位の表示鳥の恋 先端は龍の勢ひ豆の花 ブロッコリー犬も夫も食べ残す 穴すぐに塞がつてゐる花筏 虚空よりあらはれて雉ずつとゐる 自宅から土筆の範囲にて暮らす

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短歌|陣崎草子

短歌|陣崎草子

兄妹の喉石 大人らの毒を飲みこみ喉青く光らせまくる少年がいる 少年と少女はぎゅうっと手を結び巨大滑り台見下ろせり 涙洟血汗唾吸いぐしゃぐしゃのちり紙をまだ使うのだとか 妹の吐きだす赤石握りしめ青石に変える酷い火傷し 父さん母さんそのほか大人たちみんな幼すぎ地球の約束ごととか 妹よ恋をしてこい狂暴に守る兄とは似てない存在(なにか)に 青い蝶こまかく千切り燃やすこと 悪いが今は殺させてやれ

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日本語探偵【ひ】「ひとりごちる」は厳然たる現代語である|飯間浩明

日本語探偵【ひ】「ひとりごちる」は厳然たる現代語である|飯間浩明

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【ひ】「ひとりごちる」は厳然たる現代語である 「ひとりごちる」という現代語があるかどうか、ツイッターでちょっとした議論になりました。「独り言を言う」の意味で使われる動詞のはずですが、次のような趣旨の発言があったのです。 「『ひとりごちる』は古語であり、現代の辞書には載っていない。厳密には、古語では『ひとりごつ』で、『ひとりごちる』は最近の造語らしい」 これに対し、「ひとりごちる」を普段創作

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父との距離感|壇蜜

父との距離感|壇蜜

著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、壇蜜さん(タレント・女優)です。 父との距離感 先日、亭主の清野さんと眼鏡を新調しに行った。眼鏡店で検査やフィッティングを行い、最終的に決めた眼鏡をかけて亭主にみせたら、彼はくすくすと笑った。どうしたのかと聞くと、「お父さんが見えるよ」と言った。つまり、眼鏡姿の私に我が父の面影を見たらしい。亭主と父は仲が良く、連絡も取り合うし飲みにも行く。酒の強い父にタジタジになりながらも、上手く関係を作っているようでありがたい。ちなみ

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感謝しかない|石川直樹

感謝しかない|石川直樹

著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、石川直樹さん(写真家)です。 感謝しかない ぼく自身は、地球上のあちこちに出かけているというのに、東京出身の母はつい最近まで飛行機に乗ったことがなかった。本州から出たことがないどころか、長野や福島あたりに家族旅行で出かけたのが、家から離れた最長距離だった。どうしてそんな母親から、こんな放蕩息子が生まれてしまったのか、と本気で思う。 ただ、おそらくぼくは、父よりも母の影響を多分に受けている。自分が幼い頃は盛んに折り紙やぬ

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手嶋龍一さんが今月買った10冊の本

手嶋龍一さんが今月買った10冊の本

量子暗号が世界を支配する われわれの頭上に「墨子」がいて、情報世界の覇者として君臨している――その事実をどれだけのひとが知っているだろう。2016年8月、中国は量子科学衛星「墨子」を世界に先駆けて打ち上げた。最先端の量子暗号システムを備えて盗聴・傍受を封じ、軍事・金融分野での極秘通信を可能とした。まさしく「21世紀のスプートニク・ショック」だった。冷戦期に人工衛星の打ち上げでソ連に先んじられたアメリカは直ちに反転攻勢に出た。だが「トランプのアメリカ」は手を拱いて中国の独走を

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佐久間文子さんの「今月の必読書」…『クララとお日さま』

佐久間文子さんの「今月の必読書」…『クララとお日さま』

AI搭載の人工親友が導く歪んだ世界カズオ・イシグロの6年ぶりの新作『クララとお日さま』は、ノーベル文学賞受賞後の第1作ということもあり、世界同時発売されて話題を集めている。 シンプルなタイトルは童話めいた印象を与える。ショーウィンドーに並ぶクララに目を止めたジョジー。からだの弱いジョジーの遊び相手として彼女の家に買われていったクララは、ジョジーのいちばんの理解者になろうとつとめる……。 あらすじを書けば、それこそ童話じゃないかと思われそうだがそうではない。語り手のクララは

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