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片山杜秀さんの「今月の必読書」…『デヴィッド・ボウイ 無(ナシング)を歌った男』

片山杜秀さんの「今月の必読書」…『デヴィッド・ボウイ 無(ナシング)を歌った男』

孤独な少年の、帰る先なき、上昇と下降の永劫の循環運動男の子は宇宙に飛翔する。1人乗りの屹立したロケットで。フロイト主義で簡単に解釈できる、男の子の欲望の1960年代的かたちだ。61年にガガーリンが1人乗りのボストーク1号で宇宙に行き、69年には3人乗りだけれどアポロ11号が月面に到達した。 日本ではその時代に『ぼくのクレヨン』という童謡も生まれたっけ。「おひさまはあか、そらはあお」。そんな日に鼠色のロケットが発射される。乗り組むのは「ぼく」ひとり。「てをふるママはたちまちま

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28枚の小室文書が晒した「眞子さまの危うさ」

28枚の小室文書が晒した「眞子さまの危うさ」

小室さんの「勘違い」が令和皇室にもたらすものとは? ▼座談会出席者 江森敬治(毎日新聞編集委員) 片山杜秀(慶應義塾大学教授) 河西秀哉(名古屋大学准教授) 山口真由(信州大学特任教授・法学博士) <summary> ▶︎要するに、小室さんが公表した文書は「国民に向けての文章」ではない。国民にわかってもらおうとする文書ではない ▶︎小室さんの考える法律論と、日本社会に根づくより広義の“貸し借り”の感覚に決定的なズレがある ▶︎眞子さまが小室さんと結婚すれば、お二人はいず

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【片山杜秀×佐藤優】司馬遼太郎『坂の上の雲』大講義【最終回】|日清・日露と朝鮮半島

【片山杜秀×佐藤優】司馬遼太郎『坂の上の雲』大講義【最終回】|日清・日露と朝鮮半島

あえて“翻訳しない”が日韓関係を解きほぐす鍵になる。/片山杜秀(慶應義塾大学教授)×佐藤優(作家・元外務省主任分析官) <summary> ▶︎日清・日露は「朝鮮半島」をめぐる列強の利害対立から起きた戦争。その意味で「朝鮮半島」は、まさに『坂の上の雲』の“影の主役”とも言える ▶︎司馬さんは、日本の植民地支配をことさら“美化する”わけでもない。かといって、「すみませんでした」と“頭を下げ続ける”わけでもない。「日本と朝鮮半島」の関係を冷静に捉えていて、今日の我々にも、いろい

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司馬遼太郎『坂の上の雲』とインテリジェンス 明石元二郎と広瀬武夫

司馬遼太郎『坂の上の雲』とインテリジェンス 明石元二郎と広瀬武夫

司馬遼太郎の名作を読み解く短期集中連載の第4回。日露戦争の“情報戦”で活躍した2人から見える“日本のインテリジェンス”とは。/片山杜秀(慶應義塾大学教授)×佐藤優(作家・元外務省主任分析官) <summary> ▶明石は「インテリジェンス=主」で「作戦=従」ですが、広瀬は「作戦=主」で「インテリジェンス=従」と対照的 ▶インテリジェンスをめぐっては2つの考え方があって、これを「テクネー(技術)」と捉えるか、「アート(芸術)」と捉えるかの違いがある ▶『坂の上の雲』は「忍者小

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司馬遼太郎『坂の上の雲』の日本語論 夏目漱石と正岡子規と秋山真之の「ことば」

司馬遼太郎『坂の上の雲』の日本語論 夏目漱石と正岡子規と秋山真之の「ことば」

司馬遼太郎の名作を読み解く短期集中連載の第3回。漱石と子規は、秋山真之とともに“近代日本語の創設者”だった。/片山杜秀慶應義塾大学教授×佐藤 優(作家・元外務省主任分析官) <summary> ▶︎司馬さんにとって、昭和の暗さの対極にある“明治の明るさ”を“遠望”するには子規は欠かせない存在だった ▶︎『坂の上の雲』は日本語論の視点から、もっと読み込まれてもいい作品 ▶︎真之などが作った、下士官が読んでも分かる“近代的日本語”によって初めて近代的な軍隊が“組織”として機能し

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片山杜秀さんの「今月の必読書」…『アメリカの世紀と日本』

片山杜秀さんの「今月の必読書」…『アメリカの世紀と日本』

冷戦下で日本を“特別待遇” 無条件降伏。本書のキイワードだ。対米英への「開戦ノ詔勅」を読めば、日本の戦争目的は「東亜永遠ノ平和」、即ち大東亜共栄圏の確立と分かる。なら、米英がアジアから退くのが、日本の講和条件だったと考えられる。 では、米国の戦争目的は? 開戦前、米国は日本に中国等から手を引くことを求めていた。なら、日本がそうすれば講和可能だったか。否だ。米国の戦争目的は開戦直後に過激化した。アジアでの覇権争いは、軍国日本への聖戦に化けた。米国は世界に自由と民主主義を広め

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司馬遼太郎『坂の上の雲』の組織論 “老舗企業vsベンチャー企業”で読む日露戦争

司馬遼太郎『坂の上の雲』の組織論 “老舗企業vsベンチャー企業”で読む日露戦争

司馬遼太郎の名作を読み解く短期集中連載の第2回。/片山杜秀(慶應義塾大学教授)×佐藤優(作家・元外務省主任分析官) <summary> ▶︎司馬遼太郎は、日露戦争を“国民の戦争”として描くのと同時に、それを迂回路として「先の戦争」を描いたとも言える ▶︎司馬遼太郎は、一貫して現場主義。現場で働いている人を徹底的に描いている ▶︎『坂の上の雲』が多くの企業人に読まれた理由は、日本海海戦が“チームワークの勝利”として描かれているから ★前回を読む。 片山氏(左)と佐藤氏(右

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コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 詐術としての音楽小説|片山杜秀

コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 詐術としての音楽小説|片山杜秀

音楽は時間だ。音楽を味わうには時の推移を記憶せねばならない。3分のポップ・ソングなら、うまく最初から覚えて最後まで聴き通せるかもしれない。しかしマーラーやブルックナーの1時間以上掛かる交響曲だとどうか。30分聴いたところで最初の1分を思い出せるか。至難の業だ。たいてい混乱する。忘却している。記憶の捏造も容易に起こる。聴いたのと違う旋律を覚えたつもりで口ずさんだりする。したがって上手な音楽小説とは、音楽をネタに用いつつ、記憶の関節を外し、夢とうつつ、生者と死者、本物と贋物の区別

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菅「敗戦処理内閣」が露わにしたディストピアとしての未来|片山杜秀

菅「敗戦処理内閣」が露わにしたディストピアとしての未来|片山杜秀

“危機”の演出で政権を維持してきて、本物の“危機”に躓いた「安倍=菅」。「GoTo」「ステーキ会食」を止める者が官邸にいなかったことの意味を読み解く。/文・片山杜秀(政治学者・慶應義塾大学教授) <summary> ▶︎安倍政権の「それまでのやり方」は“平時の非常時化”。しかしコロナ危機を前にそれが手詰まりになった ▶︎安倍政権と異なり、菅政権は「首相みずからが決定する」というトップダウンのあり方が、無理にでも“無謬性”を貫くことを強いて、柔軟な軌道修正を困難にしている ▶

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司馬遼太郎『坂の上の雲』大講義 ビジネスマン必須の“最高の共通言語”【片山杜秀×佐藤優】

司馬遼太郎『坂の上の雲』大講義 ビジネスマン必須の“最高の共通言語”【片山杜秀×佐藤優】

「エリート」と「大衆」が分断された今こそ、世代を超えて読み継ぐべき「国民文学」。/片山杜秀(慶應義塾大学教授)×佐藤優(作家・元外務省主任分析官) <この記事のポイント> ▶︎連載が開始されたのは1968年。右肩上がりの時代に、多くの読者は徐々に“成り上がっていく”自分を重ね合わせて読んだ ▶︎司馬遼太郎はとにかく「動いているもの」が好きで、「組織」とか「システム」には全く興味を示さなかった ▶︎『坂の上の雲』は世代間のギャップを埋める“最高の共通言語”になるかもしれない

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