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藤原正彦「古風堂々」 哀しい子守唄

藤原正彦「古風堂々」 哀しい子守唄

文・藤原正彦(作家・数学者)  ケンブリッジ大学にいた頃、クイーンズカレッジの学長宅(プレジデント・ロッジ)に夫婦で夕食に招かれた。築400年というこの木造3階建ての2階には、幅6メートル、長さ25メートルほどの細長い部屋があった。ロング・ギャラリーという学長自慢の部屋で、300年前の学長が集めた蝶や金バエの標本やら、『痴愚神礼讃』で有名なエラスムスのケンブリッジ時代の椅子、などが飾ってあった。一番驚いたのは、部屋の長い壁面が床に垂直でなく傾いていたことだった。「こんな建物

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