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#今月の必読書

『文藝春秋digital』2022年6月ラインナップ

■会員限定イベント●6月8日(水) ・新庄剛志「薬物使用」の過去 抜き打ち検査で「陽性」も、詳細は伏せられ、その年に引退―― 鷲田康(ジャーナリスト)+本誌取材班 ●6月10日(金) ・プーチンが最も殺したい男の告白 M・ホドルコフスキー(オリガルヒ・石油会社「ユコス」元代表)「ウクライナ侵攻は彼の個人的な動機から始まった」 ・「性暴力」私は負けなかった 卜田素代香(仮名)「暴行後『証拠が残るからシャワーを』と男が強いてきました」 ・新連載 外事警察秘録②「日本赤軍との闘い

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梯久美子 川端文学の救い「少年」(川端康成)

川端文学の“救い”川端康成がガス自殺で命を絶って50年の今春、これまで全集でしか読むことのできなかった『少年』が文庫化されて話題になっている。 この小説を、版元のホームページは「幻のBL作品」としている。BLとはボーイズ・ラブの略で、帯にも「少年愛」の文字が躍る。それは、中学校(旧制)時代、寄宿舎で同室だった清野という下級生との、こんな描写が頻出するためだろう。 〈床に入って、清野の温い腕を取り、胸を抱き、うなじを擁する。清野も夢現《ゆめうつつ》のように私の頸を強く抱いて

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佐久間文子 性暴力における被害者と加害者の視点「生皮」(井上荒野)

性暴力における被害者と加害者の視点衝撃的なタイトルだ。 皮を剥がれ、血を流し続ける心の痛みがひりひりと伝わってくる。 本書は、文学の世界で起きた、ショッキングな性暴力を題材にしている。ショッキング、と書きながら矛盾するようだが、こういうことは実際にあちこちであっただろう、とも強く感じた。 動物病院の看護師として働く柴田咲歩は、7年前、カルチャーセンターの小説講座の講師だった月島光一からホテルに呼び出され、望まない性交を強いられた。 月島の講座から2人目の芥川賞の受賞者

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5

池上彰 本当のロシアを知るために「人生百年の教養」(亀山郁夫)

本当のロシアを知るために世は「教養」ブームです。書店の店頭には、数々の教養本が並んでいます。なぜいま、教養なのか。 この書籍の題名通り、人生100年時代。仕事からリタイアしても、まだまだ長い人生が続きます。どうやって過ごそうか。とりあえずテレビの地上波を見ても、芸能人が仲間内ではしゃいでいるばかり。見るに堪えません。 そんなとき、若い頃に読むことのなかった本を読んだり、聞くことのできなかったクラシックを聴いたりしたいと思っても……、何を選べばいいかわからない。そんな迷いを

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梯久美子さんの「今月の必読書」…『もういちど、あなたと食べたい』筒井ともみ

“食”を通じて人を見つめる映画『それから』や『阿修羅のごとく』、テレビドラマ『家族ゲーム』、『センセイの鞄』などで知られる脚本家・筒井ともみが、忘れられない人々を、「食」をめぐるエピソードを軸に回想したエッセイである。 登場するのは、加藤治子、松田優作、深作欣二、北林谷栄、久世光彦、和田勉、岸田今日子、藤田敏八、向田邦子、樹木希林……といった錚々たる顔ぶれ。芸能界だけでなく、佐野洋子、須賀敦子、松本清張などの作家との縁も描かれる。 向田邦子をはじめ、脚本家にはエッセイの名

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9

池上彰さんの「今月の必読書」…『自由の国と感染症 法制度が映すアメリカのイデオロギー』ヴェルナー・トレスケン著

反ワクチン派の淵源を解き明かすアメリカでは、新型コロナウイルス対策のためのワクチン接種をめぐって対立が起きています。今年に入っても1月、バイデン政権が従業員100人以上の企業に対し、従業員にワクチン接種か週1回の検査を義務付けたところ、全米の半数以上の州が「憲法違反」を理由に差し止めを求めて提訴。これを受けて連邦最高裁判所が差し止めを命じました。理由は、担当する政府の労働安全衛生局に「公衆衛生を規制する権限はない」というものでした。 最高裁の判事は9人。保守派の6人は差し止

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4

片山杜秀さんの「今月の必読書」…『鷹将軍と鶴の味噌汁 江戸の鳥の美食学』菅豊

日本人の“鳥肉食文化”の小百科全書能に『善知鳥』なる演目がある。ウトウと読む。鳥の名という。シテは奥州の外ヶ浜の猟師の亡霊。「善知鳥を獲り続けた罪で、あの世で自分は雉にされ、善知鳥の化けた鷹に狩られている」と語り、地獄の責め苦を見せる。『善知鳥』の物語は文楽や歌舞伎の『奥州安達原』にも応用されている。善知鳥文治という侍が、禁制の鶴を密猟し、酷い目に遭う。 どちらも、殺生を悪とする仏教のおしえを踏まえた、鳥を巡る因果応報譚だろう。そんな物語が、能なら室町時代、文楽や歌舞伎なら

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本郷恵子さんの「今月の必読書」…『動物たちの家』奥山淳志

人間と動物、その儚い関係を綴る私は猫派である。猫が主人で、私は下僕。猫が好き放題にしていてくれれば、私も気が楽だ。だが犬との関係は楽ではない。けなげな目でひたと見つめられ、全身で無償の忠義を示されたら、どうしていいかわからない。犬の一途な魂にみあうほどの器量を、たいていの人間は持っていない。ああ、犬は切ない。 著者は1972年生まれ。4歳の時に、大阪の公営団地から奈良の新興住宅地に移り、そこで犬や、そのほかの生き物たちとの生活が始まった。「全身を毛や羽で覆われた温かで小さな

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角幡唯介さんの「今月の必読書」…『ハテラス船長の航海と冒険』ジュール・ヴェルヌ著 荒原邦博訳

北極点を目指した英雄の夢と実像『海底二万里』などで有名なジュール・ヴェルヌによる極地探検小説の初の完訳本である。ロマンあり、サバイバルあり、部下の反乱ありで、19世紀の極地探検の世界像をまるごとつめこんだ贅沢すぎる作品となっている。 作品は2部構成だ。第1部は実際の歴史をふまえた、とても実証的な筋の話である。19世紀の北極探検の主役は英国海軍の探検家たちだ。1840年代に彼らはフランクリン隊の大遭難をひきおこすが、その行方を探すために派遣された多くの隊により地理的解明が一気

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角田光代さんの「今月の必読書」…『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』サリー・ルーニー著 山崎まどか訳

「ありがち」の対極にある青春恋愛小説語り手のフランシスはトリニティ・カレッジに通う21歳の女性で、詩作にすぐれている。高校時代の同性の恋人、ボビーと別れてはいるものの今も親密で、2人でスポークン・ワードのパフォーマンスをしている。その活動によって知り合った30代の夫婦、俳優のニックとジャーナリストのメリッサと親交を持つ。顔立ちのうつくしいニックとフランシスは恋に落ち、ボビーはメリッサに惹かれていく。 あらすじにすると、ありがちな青春恋愛小説みたいで、そのことに私自身がびっく

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佐久間文子さんの「今月の必読書」…『骨を引き上げろ』

時代を超越した古典の風格を持つ小説全米図書賞受賞作。ジェスミン・ウォードはこの後、『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』でも受賞しており、同賞を2度受賞するのは女性作家として初めての快挙だという。 本作は、2005年に多数の死者を出した超巨大ハリケーン、カトリーナが襲来するまでの12日間を、ある家族の日常風景として1日ごとに描く。その「情け容赦のない語り」はすごみのある美しさをたたえ、みごとな構成とともに、時代を超越した古典の風格をすでにしてそなえている。 主人公は15歳の少女

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池上彰さんの「今月の必読書」…『魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣』

伝説の写真家の半生に迫る水俣病と聞いて思い出す写真。それは、胎児性水俣病患者の少女を抱いて入浴する母の姿を捉えた「入浴する智子と母」です。撮影したのは、アメリカの写真家ユージン・スミス。写真誌『ライフ』に掲載された写真は、「水俣のピエタ」と評されるようになります。 ピエタ像といえば、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂に展示されているミケランジェロの作品が有名です。イタリア語で「哀れみ」を示す像は、十字架から降ろされたイエスを聖母マリアが抱いています。智子と母親の姿を撮影した写真

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本郷恵子さんの「今月の必読書」…『チャイニーズ・タイプライター 漢字と技術の近代史』

漢字とアルファベットをめぐる技術の変遷はじめてワープロ専用機を買ったのは、1986年だったと思う。値段は20万円以上で、当時大学院生だった私には、かなり勇気のいる買い物だった。キーボードで入力した文章が、きれいな活字になって打ち出されると、ひどく立派なことを成し遂げたような気がしたものだ。 初期のワープロで苦労したのが漢字への変換である。いちいち時間がかかるうえに、使用頻度が低いJIS第2水準の漢字群については、必要になるたびに専用のフロッピーディスクをセットして、わざわざ

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角幡唯介さんの「今月の必読書」…『ガリンペイロ』

アマゾンの奥地で一攫千金を夢見る無法者たち自分が生きている意味や経験を、現実の何かに置き換えることは可能だろうか。山や極地を旅すれば、その間は生きていることを実感できる。でも、その時間は永久にはつづかない。最近では移動や狩りでつながった大地こそ、人間存在の根源的帰属先では? と考えるようになったが、かといって完全に自信があるわけではない。それを探求するのが人生の唯一の仕事だとわかっていながら、ずぼらなので手っ取り早くその答えを知りたいとも思う。 と、そんな折に本書を読み、ふ

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