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武田徹の新書時評 緑のニューディール

武田徹の新書時評 緑のニューディール

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。  緑のニューディール今夏も豪雨災害が日本各地で発生した。地球温暖化の影響が指摘されている。 温暖化は本当に起きているのか、温室効果ガスがその原因なのか……。明日香壽川『グリーン・ニューディール』(岩波新書)はこうした“懐疑論”を丁寧に論駁することから書き出され、温暖化防止のために再生可能エネルギーシフトを急がねばならない必要性を訴える。 しかし、その一方で経済活動の停滞も許されない。そこで再エネ利用の

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『清六の戦争 ある従軍記者の軌跡』著者・伊藤絵理子さんインタビュー
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『清六の戦争 ある従軍記者の軌跡』著者・伊藤絵理子さんインタビュー

伊藤さん 太平洋戦争末期、フィリピンの洞窟で新聞を作り続け、戦火に散った一人の従軍記者がいた。毎日新聞社の前身である東京日日新聞の記者・伊藤清六だ。本書はその人生を、親族であり同業者でもある伊藤絵理子さんが追ったものとなる。 伊藤さんは2005年、毎日新聞社に入社。入社直前に父親から、曾祖父の弟が同社の社員だったと聞かされた。 「経済部などを経て、2011年、資料を管理する情報調査部に配属になりました。部の一角に『本社員顔写真』のキャビネットがあり、父の話をふと思い

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本上まなみさんが今月買った10冊の本

本上まなみさんが今月買った10冊の本

非日常の世界探検冒険。非日常の世界を、家に籠もりきりの私は足踏みするほど渇望していました。数々の探検記を上梓する椎名誠氏は大の「漂流記マニア」だそうで、今作『漂流者は何を食べていたか』では14冊を取り上げ、その魅力を綴っています。 船底を破るクジラやシャチ、嵐による高波。強烈なアクシデントに見舞われながらどうして助かるの? とまずは彼らの強運に驚き、さらにトビウオ、シイラがボートに飛びこんでくる、ウミガメが寄ってくる、海鳥が羽根を休めにくるなど、一瞬のチャンスを確実に手中に

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平松洋子さんの「今月の必読書」…『百間、まだ死なざるや 内田百間伝』

平松洋子さんの「今月の必読書」…『百間、まだ死なざるや 内田百間伝』

稀代の随筆家、知られざる実像虎視眈々、手練れの「日記読み」が、作家、内田百閒の姿を追う。日記という“歴史と人物の証言”に耳を澄ませ、糸目を細かく縫うようにして綴る気迫や執念。567ページにおよぶ大著に惹きつけられ、数日かけて一気に読み通した。 まず、すわ誤植か!? と一瞬ぎくりとさせるタイトル「百間」の表記について。一般には「百閒」と表記されるが、著者によれば、作家みずから「閒」の字を使い始めたのは昭和19年以降で、戦後から「閒」の字に変えた。著者が軸足を置くのは戦前・戦中

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原田マハさんの「今月の必読書」…『フランス革命の女たち〈新版〉激動の時代を生きた11人の物語』

原田マハさんの「今月の必読書」…『フランス革命の女たち〈新版〉激動の時代を生きた11人の物語』

「ベルばら」だけではない女性たちの革命私は10歳のとき、連載中の「ベルサイユのばら」を貪り読んでいた。フランス革命などわかるはずもない少女は、抗えない運命に巻き込まれて断頭台の露と消えた王妃マリー・アントワネットや、男装の麗人オスカルと彼女の従者アンドレの悲恋に、ただ胸をときめかせるばかりだった。50代になって「ベルばら」を読み返してみると、少女時代のときめきがそのまま蘇ると同時に、ようやく革命の意味を理解し、身分にかかわらず人生においてその人を支えるのは「愛」なのだと悟った

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トランクの中|髙樹のぶ子

トランクの中|髙樹のぶ子

著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、髙樹のぶ子さん(作家)です。 トランクの中あと数年で、父が死んで50年になる。 父が旅立つ夜、葉書を書いていたが、宛名は白紙だった。いつもの金釘文字が少し乱れていた。死の数時間前なのは確か。 思い返すとき、娘は良い記憶ばかりを収集する一方で、思い出したくない事を、暗いトランクに詰め込む。このトランクを開ければ、とんでもないものが噴出しそうなので、そっと鍵をかけたままにしている。 このトランクの中では、戦争や特攻隊の生

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中島岳志さんの「今月の必読書」…『テアトロン 社会と演劇をつなぐもの』

中島岳志さんの「今月の必読書」…『テアトロン 社会と演劇をつなぐもの』

ブレヒト教育劇を現代に更新する試み2019年に開催された「あいちトリエンナーレ」では、「表現の不自由展・その後」をめぐって賛否が渦巻き、「電凸」といわれる電話での抗議運動がおこった。抗議がエスカレートし、脅迫的な内容が含まれるようになると、主催者は展覧会の中止を発表。すると、不自由展以外の参加アーティストが反発し、出展のボイコットに至った。 その渦中で誕生したのが「Jアート・コールセンター」だ。電凸をアーティストが受け、抗議をする人と直接会話をする試みがなされた。これを主導

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母のこと|ちばてつや

母のこと|ちばてつや

著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、ちばてつやさん(漫画家)です。 母のこととにかく厳しい人でした。 そして「漫画」が大嫌いで、我が家には童話や世界文学全集など図書館みたいにどっさり揃っていたのにマンガ本は1冊もありませんでした。食べるとベロが染料で真っ赤に染まる、昔の駄菓子に近い感覚で見ていたのだと思います。子供たちは大好きで夢中になって欲しがるけど、身体には良くなさそうだと。 小学校に通い始めた2年生の秋。杉浦茂さんの「魔法のランプ」の豆本を道でたま

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スターは楽し 千葉真一|芝山幹郎
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スターは楽し 千葉真一|芝山幹郎

千葉真一 お茶目な火炎放射器千葉真一を飛行機のなかで見かけたことがある。1990年代の初めごろだったか、バハ・カリフォルニアのロスカボス空港からロサンジェルス行きのアラスカ航空機に乗り込んだところ、機体前部の6席しかないファーストクラスのひとつに、サニー・チバが腰を下ろしていたのだ。おや、という表情を私が浮かべたせいか、千葉真一は眼もとをちょっとゆるめてくれた。それだけの話だが、なぜか記憶に残っている。 いまにして思うと、千葉真一は当時50代前半で、すでに活動の拠点を

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佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『実力も運のうち 能力主義は正義か?』マイケル・サンデル

佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『実力も運のうち 能力主義は正義か?』マイケル・サンデル

社会の分断を生んだ能力主義の問題点8月15日、アフガニスタンの武装勢力タリバンが首都カブールを制圧した。同日、アシュラフ・ガニ大統領は国外に逃亡し、アフガニスタンの現政権は崩壊。この事件は今後の国際関係に大きな影響を与える。 〈米国のアフガニスタンを巡る戦略について、同国とともに派兵した欧州諸国で不満と困惑が広がっている。(中略)「欧米協調」の象徴だったアフガン駐留が失敗し、欧州の安全保障体制にも影響が出る恐れがある。/(中略)英議会下院の議場で18日、ジョンソン首相は与野

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