文藝春秋digital

坂上遼 介護のビーナス

坂上遼 介護のビーナス

文・坂上遼(探訪記者・介護人) 昨年7月、68歳にして介護施設で働き始めた。きっかけは94歳の母を亡くしたことだった。20年近く介護どころか孝行らしいことは何一つしてこなかった。「墓に布団は着せられぬ」の後悔から、3年喪に服したという斉の晏子に倣って、その期間くらいは続けてみようと思いたった。放送記者や大学教員、出版人の経験しかない老人が、過去の経歴を捨てて、徒手空拳で赤の他人の、それも一回り以上うえの「老老介護」のスタートだった。 一口に介護と言っても365日気の休まる

スキ
8