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#文藝春秋2022年1月号

スターは楽し 松田優作|芝山幹郎

松田優作 静かな美貌と鬼の気配松田優作が出ていなかったら、『ブラック・レイン』(1989)は、これほど記憶に残る映画にはならなかったはずだ。 冷静になって見直すとやや荒っぽいところもある映画だが、89年10月の劇場試写で見たときはどきりとした。 松田優作の演じるサトーが、鬼気迫る演技を見せていたからだ。オーバーアクトすれすれと感じた人はいるかもしれないが、私は納得した。そうか、このやり方でアメリカ映画と勝負したのか。 サトーは、やくざや犯罪者といった類型を大きくは

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【蓋棺録】中根千枝、古葉竹識、長谷川和夫、牧阿佐美、日比野弘〈他界した偉大な人々〉

偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム。 ★中根千枝 社会人類学者の中根千枝は、多くの国でフィールド調査を行なった比較から、日本社会を「タテ社会」として論じ、論壇でも活躍した。 1967(昭和42)年、『タテ社会の人間関係』を刊行する。当時は珍しい社会人類学による日本論で、ベストセラーになって十数か国語に翻訳された。その後も世代を超えて愛読され、すでに117万部に達している。 26(大正15)年、東京に生まれる。父は弁護士だった。小学生のとき父が中国

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佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『東條英機 「独裁者」を演じた男』一ノ瀬俊也

知られざる戦争指導者の実像コロナ禍の危機にあるにもかかわらず、日本の政界は緊張感に欠けている。当事者にとっては深刻だが、国家や国民とは関係ない権力闘争に明け暮れている。 もっとも太平洋戦争中も日本は2度も首相が交替している。総力戦体制の確立に努め、対米英戦争に日本が踏み切ったときの首相だった東條英機(1884年12月30日生~1948年12月23日没、41年10月18日~44年7月22日首相)の生涯を見ると、今日にも共通する日本の政治文化がわかる。まず、東條は知識人からは人

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ちらし鮨 阿刀田高

著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、阿刀田高さん(作家)です。 ちらし鮨母には孝行らしい孝行をなにもしなかった。人生を省みて痛恨の極みである。 母はこよなく私を愛してくれた。なによりも大切と考えていただろう。ベタベタとかわいがるのではなく、深く愛し、期待し、幸福を願ってくれていたにちがいない。私は5人兄姉の末っ子。高校2年のときに父を失い、兄姉たちはおおむね家を去り、私は大学の文学部に進んだものの、2年生のときに肺結核にかかり、入院生活を余儀なくされていた

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三方善し 田原総一朗

著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、田原総一朗さん(ジャーナリスト)です。 三方善しオヤジを表す言葉は、優しい、お人よし、能天気……。僕が楽天的なのは、明らかにオヤジの遺伝だと思う。逆に、おふくろは、すごく厳しい人だった。僕とオヤジの2人が、いつもおふくろから怒られていたものだ。 小学校の時、授業中に窓の外を見ると、なぜかオヤジが立っていたことがあった。オヤジは外から窓をあけ、私に向かって「映画を観にいこう」と。そのまま授業をさぼって、2人で映画を観にいっ

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世界経済の革命児 リー・シャン(理想汽車創業者)|大西泰之

ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、リー・シャン(李想、Li Xiang、理想汽車創業者)です。 リー・シャン ©ロイター/アフロ 大学に進学せず起業を選んだ中国EV三銃士の一人中国にはかつて100社余りEV(電気自動車)メーカーがあった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大で世界のサプライチェーンが凍りつく中、量産化が間に合わなかったメーカーは開発資金が底をつき、2020年以降バタバタと倒産している。

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日本語探偵【さ】『三国』第8版は相談相手になる辞書 飯間浩明

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。 【さ】『三国』第8版は相談相手になる辞書『三省堂国語辞典』(三国《さんこく》)の第8版がこの12月に刊行されます。『三国』という辞書は1960年の初版刊行以来、現代語を重視し、今の日本語を鏡のように映そうとしてきました。かく言う私も編集委員の末席に連なっています。 同じ版元から出ている『新明解国語辞典』とよく間違われます。『新明解』は説明の文章が詳しく、時に皮肉が交じるところが多くのファンに愛

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数字の科学 アインシュタイン来日の年|佐藤健太郎

サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します。 アインシュタイン来日の年=100年前本稿は2022年新年号に掲載される。そこで、ちょうど100年前の1922年に何があったかを調べてみたら、かの物理学者アインシュタインが来日した年であった。トップ研究者が世界を飛び回るのはいまでこそ当たり前だが、当時は船旅の時代であり、多忙なアインシュタインを東洋の果てまで招くのは並大抵のことではなかった。招聘に成功したのは、出版社「改造社」の社長である

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大相撲新風録 阿炎|佐藤祥子

阿炎(埼玉県越谷市出身、錣山部屋、27歳) 謹慎生活で心が成長 あわや優勝の復活劇のびのびと長い手脚で土俵狭しと飛び回る“やんちゃ関取”が、一年納めの九州場所で幕内に復活した。元関脇寺尾の錣山親方が育てた愛弟子、阿炎だ。 阿炎は、相撲協会のガイドライン違反により、昨年9月の秋場所から3場所の出場停止処分を受け、処分明けの今年三月春場所では西幕下五十六枚目まで番付を落としていた。しかし、ケガや病気での休場ではなく身体は至って健康ゆえに、復帰場所ではなんなく優勝し、翌五月

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詩 瀬戸内寂聴 百周年記念傑作選

水の声水の声が聞きたい。古里の家の裏の小川の水の声が。死を待つだけの老人がうわ言をいった。ひ孫の少女がその日から、老人の枕元に坐り、赤い玩具のバケツの水を掬いあげては落しはじめた。少女がつくった小川の囁き。貝殻のように薄い少女の掌の窪みから、水はきらきら輝きながらくり返しバケツに落ちていく。さらさらと、さらさらさらとひっそりと、日がな一日さらさらと。(1992年2月号)

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俳句 飯田蛇笏・石田波郷・金子兜太 百周年記念傑作選

飯田蛇笏 野分して鶏人の顔よろこばず 鷹鳴いて深山の空小暇あり (1962年2月号) 石田波郷 年酒して旅の夫婦の埓もなし 釣堀の著膨れ父子いつまでも (1965年1月号) 金子兜太ほとばしる湯殿山霊代初景色 胆っ玉おっかあたちや寝正月 (1996年1月号)

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短歌 生方たつゑ・佐佐木幸綱・俵万智 百周年記念傑作選

生方たつゑあこがれを追ひつめてゆくかたちにて草焼けば草の炎は赤し 蚕豆の花ゆれてゐしふるさともわが母も夢に見ることはなし (1978年3月号) 佐佐木幸綱 あかあかと炎は立てり戦争も恋も政治も挑発として 背振山地の起伏を移る夕日かげ人死して移る歴史とは何 (1999年1月号) 俵万智オンライン授業垣間見してみれば源氏が女を垣間見ており 正しさが大暴落をする時代マスクの中に何か隠して (2021年3月号)

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大谷翔平 彼の天井は見えない 栗山英樹 100周年記念企画「100年の100人」

メジャーで歴史的な活躍を続ける大谷翔平(27)。日本ハムの監督として二刀流を育てた栗山英樹氏がいま明かす“怪物”との秘話。/文・栗山英樹(元日本ハムファイターズ監督) 栗山氏 翔平とは二度と一緒に野球をやりたくない——。それが僕のいまの正直な気持ちです。 僕は、初めて高校生の彼を見たときから「投打どちらかを無くす選択は絶対にありえない」と考えていました。当時から最高の投手に、そして最高の打者になる可能性を秘めていた。ただ、それだけに僕は、翔平と野球した5年間「この才能を

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藤井聡太 一瞬で見抜く少年 杉本昌隆 100周年記念企画「100年の100人」

史上最年少で四冠を達成した藤井聡太竜王(19)。師匠の杉本昌隆氏は、およそ10年前、その才能を目の当たりにした。/文・杉本昌隆(将棋棋士・八段) 杉本氏 10年ひと昔と言われるが、時の流れが速い現代なら「ひと昔」は5年ぐらいか。感じ方は人それぞれだが、昨日のように鮮明に思いだす10年もあるものだ。 あれは2010年のこと。将棋を本格的に学びたい少年少女が集う東海研修会、幹事の私は新しく入会してきた小学1年生の聡太少年と出会った。彼の将棋を見てすぐに分かった。外見こそまだ

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