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【連載】ハコウマに乗って|あおばのみち|西川美和

【連載】ハコウマに乗って|あおばのみち|西川美和

あおばのみち私は、思春期の男性について知らない。 女子だけの中学と高校に通ったせいで、その年頃の異性たちと身近に過ごす機会を失ったままになったのだ。大人になればさらに彼らとの接点は遠のき、電車やファストフード店で、グループでつるみながら一言も会話せずゲームする姿を眺めるたびに、謎はつのる。彼らのノリ、こだわり、主義思想、まるでわかってない。ウィークポイントと言ってもいい。 そんな私に、ある男子高校から映画のティーチ・インをしてほしいというオファーがあった。「ティーチ・イン

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【連載】ハコウマに乗って|トンネルをぬけると|西川美和

【連載】ハコウマに乗って|トンネルをぬけると|西川美和

トンネルをぬけるとこれだけ言われているのに、私は東京から旅に出た。無自覚に菌を撒き散らすやつ。ルールを無視して公序良俗を乱すやつ。お前みたいなのがいるから病床が逼迫し、ズルズル収束せず、経済も悪化――そうかもしれぬ。そうかもしれぬが……と思いつつ新幹線に飛び乗った。 2月に封切りした映画に向けて、90以上の取材を受けて宣伝した。「思いついたきっかけは?」「タイトルに込めた意味は?」「主演俳優の魅力は?」……20媒体を超えた頃から、ジュークボックスになったように自動的に口が動

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【対談】内田也哉子×西川美和|すばらしき「家族の苦しみ」

【対談】内田也哉子×西川美和|すばらしき「家族の苦しみ」

内田也哉子氏は、3月18日、脳科学者の中野信子氏との共著『なんで家族を続けるの?』(文春新書)を上梓。樹木希林と内田裕也の娘として育った「家族の苦しみ」を赤裸々に明かしている。 一方、西川美和監督は、5年ぶりとなる新作『すばらしき世界』が公開された。そんな2人をつなぐのは内田氏の夫である俳優・本木雅弘。西川監督の『永い言い訳』(2016年公開)で主演を務めた。 不思議な縁をもつ2人が「家族と人生」を赤裸々に語り合った。/内田也哉子(エッセイスト)×西川美和(映画監督)

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【新連載】ハコウマに乗って|ふしぎなおもち|西川美和

【新連載】ハコウマに乗って|ふしぎなおもち|西川美和

ふしぎなおもち 広島に住む大正14年生まれの伯母は、物忘れが多くなった。 子供がおらず、大学で英語を教えていた夫は20年前、夕餉の卓でおちょこ一杯の日本酒を「美味しいですねえ」と舐めながら眠るように逝き、以後は小さな戸建に一人で暮らしている。 超がつくほどの綺麗好きで、帰省したおり手土産を持って訪ねても、台所の調理台、廊下、家具調度品、何もかもがピカピカに磨かれて、玄関には季節の花が生けられている。90を過ぎても足腰は強く、私が東京に戻ろうとするのを見かけると、ポチ袋に

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【新連載】ハコウマに乗って|あとすこしほしい|西川美和

【新連載】ハコウマに乗って|あとすこしほしい|西川美和

あとすこしほしい 今号からの新参です。読者の方には耳慣れないと思われるタイトルをつけたので、その説明から。 「ハコウマ」というのは生きた馬ではなく、演劇の舞台や映画の撮影現場で使われる、ベニア合板などで作られた木製の箱のことをいう。「馬」は踏み台を意味し、「箱馬」と書くようである。大きさはランドセルよりちょっと縦長、ハリウッドではリンゴの木箱に例えられ、「アップルボックス」とも呼ぶ。機材屋さんのホームページで確認すると、縦50センチ×横30センチ×高さ20センチのものを標

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