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#藤原正彦

『文藝春秋digital』2022年6月ラインナップ

■会員限定イベント●6月8日(水) ・新庄剛志「薬物使用」の過去 抜き打ち検査で「陽性」も、詳細は伏せられ、その年に引退―― 鷲田康(ジャーナリスト)+本誌取材班 ●6月10日(金) ・プーチンが最も殺したい男の告白 M・ホドルコフスキー(オリガルヒ・石油会社「ユコス」元代表)「ウクライナ侵攻は彼の個人的な動機から始まった」 ・「性暴力」私は負けなかった 卜田素代香(仮名)「暴行後『証拠が残るからシャワーを』と男が強いてきました」 ・新連載 外事警察秘録②「日本赤軍との闘い

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藤原正彦「的外れにつぐ的外れ 古風堂々39」

文・藤原正彦(作家・数学者) 私がイギリスにいた頃、教えていたケンブリッジ大学クイーンズカレッジの学長をしていた地球物理学者が、私の帰国後10年ほどして我が家を訪れた。彼は学長を退いた後、爵位を授かり上院議員として政府の科学技術政策に携わっていた。夕食後の団欒の中で彼が、「イギリスでは若者たちの理数離れがひどい。読書離れも進んでいる。原因についてはいろいろ言われているが、マサヒコ、真の原因はいったい何だろうか」と深刻な顔で私に訊いた。「我慢力の欠如」と即答した。数学の問題は

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藤原正彦 器械嫌い 古風堂々38

文・藤原正彦(作家・数学者) この歳になって初めてスマホを購入した。10年ほど前に家族から「緊急連絡用に」と説得されケータイは持ったが、今回は家族に「スマホならどこでも調べものができる」と誘惑された。買って4ヵ月ほどたつが、まだ電話とメールがやっとという状態だから、ケータイと同じだ。息子や女房は旅先でも、どのレストランにしようかスマホで調べ、そこへの道案内までスマホにさせたりする。私が使い方を尋ねると、息子はさも面倒臭そうに、女房は「相変わらず無能ねえ」という顔で教えてくれ

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藤原正彦 美しき論理 古風堂々37

文・藤原正彦(作家・数学者) EUは気候変動対策として、2035年にガソリン車の新車販売を禁止するばかりか、2026年から脱炭素への取組み不十分な国からの輸入品に関税をかけると言明した。排ガスによる健康被害とCO2による地球温暖化を防ぐという美しい論理があるから、どんなルールを作っても許されると思っているらしい。 EV(電気自動車)のみにしようというのだろうが、現在のものは、家庭用電源で10時間充電して300キロくらいしか走らない。距離をのばすのは電池の改良でいずれ可能に

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藤原正彦 父の手拭い 古風堂々36

ロシアによるウクライナ侵攻ほどのあからさまな侵略が、21世紀ヨーロッパで行なわれるとは信じ難いことである。さらなるショックは、弱小国ウクライナが強大国ロシアに一方的に蹂躙され、多くの市民が殺されてもなお国家の存亡をかけ勇敢に戦っているのを、毎日毎晩テレビなどで見ながら、どの国も助けに行こうとしないことだ。アメリカでは最タカ派議員さえもウクライナへの戦闘機供与に反対している。誰もが核攻撃をほのめかす狂気のプーチンと事を構えたくないからだ。核攻撃をほのめかしさえすれば台湾や尖閣を

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藤原正彦「生意気な小僧だよ」石原慎太郎の芥川賞授賞式 古風堂々35

文・藤原正彦(作家・数学者) 父の小説で初めて本になったのは、昭和30年に出版された『強力伝』だった。ぺらぺらの表紙の本だったが、父はそれをうれしそうに枕元に置いて寝た。年が明けた1月のある日、父は勤め先の中央気象台から帰宅するや、新聞をカバンから出し家族の前でヒラヒラとさせ、「どうだ参ったか、直木賞候補になったぞ」と言った。そして私に、10篇ほどの候補作の中から新田次郎『強力伝』に赤鉛筆で丸をつけるよう命じた。前にサンデー毎日賞の候補になった時、同じことをしたら1等賞に選

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藤原正彦 驕れる中国とつきあう法「品格なき大国」ロシアより危険!

中国の噓は不治の文明である。弱腰で臨んでいては籠絡されてしまう──。/文・藤原正彦(作家・数学者) 藤原氏 「えっ、羞恥心は」 経済力をもった中国の人々が海外に出るようになって以来、その行儀悪さが世界中に知られるようになった。道にツバを吐く、ゴミをポイ捨てする、列に並ばない、道路や室内や車内で大声でしゃべる……と枚挙にいとまがない。十数年前に北京から内モンゴルまで旅した私は、本場の凄さに仰天した。道路はクラクションの騒音で満ち、強引に割り込む車は後をたたず、歩道に乗り上げ

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藤原正彦 パンドラの箱 古風堂々34

文・藤原正彦(作家・数学者) 整理整頓が苦手で、幼い頃から「出しっ放し、やりっ放し」と母に叱られていた私だった。中1のときにはじめて4畳の個室が与えられ、29歳で渡米するまではここで、机、大きな本棚、散らばった本や論文、脱ぎ捨ての衣類などのすき間に万年床を敷いて寝ていた。「何がどこにあるか分かっているからいじらないでよ」と母に釘をさしておいたのだが、見かねた母は時折掃除をしていたようだ。自分で掃除した記憶がないのに雑然さが悪化しなかったからだ。 この正月に、心を改め整理整

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藤原正彦 民主主義という幻想 古風堂々33

文・藤原正彦(作家・数学者) 米国のバイデン大統領が「民主主義サミット」を開催した。110ほどの国や地域の首脳などが招かれ、日本からは岸田首相が出席した。中国、ロシアが招待されず台湾が招待されたのを見ても、反専制主義という大義の下、自らの主導で民主主義国を結集し、中ロ包囲網を作ろうというものだ。中ロ、とりわけ中国による軍事力や経済力を用いた、傍若無人ともいえる他国への威圧や国内少数民族への人権抑圧、などを封じこめるのは大賛成だが、なぜか喉にひっかかる小骨がある。 民主主義

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藤原正彦 愛とディスタンス 古風堂々32

文・藤原正彦(作家・数学者) ソーシャルディスタンスとは、「感染拡大を防ぐため距離をとること」の意だが、臆病かつ律義な私は新型コロナが下火になる最近までこれを厳格に守り、息子達さえ我が家に来させなかった。孫に会いたくなると広々とした公園の芝生でランチをとったり、お盆に墓参りを兼ね山荘に全員集合した時は、PCR検査陰性を参加条件としたほどだ。会議、会合、講演、インタビュー、打合わせなども可能な限りズームでこなした。行きつけのジムやギョーザ屋やそば屋にも行かなかった。秘かに慕情

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藤原正彦 日本の通信簿 古風堂々31

文・藤原正彦(作家・数学者) 毎年、ノーベル賞の発表される10月は、通信簿をもらう生徒の気分になる。日本の学問水準の評価が下されるように感ずるのである。今年は真鍋淑郎氏が物理学賞に輝いた。ここ1年間、大リーグ大谷選手のホームラン以外にさしてうれしいこともなく燻ぶっていた私にとって、久し振りのめでたいニュースだった。気候変動の予測モデルを作った功績によるもので、現代の気候研究の基礎となる先駆的研究だという。四国のド真中、すなわちド田舎で生まれ育ったのも、日本の底力を示すようで

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藤原正彦 線路は続くよ 古風堂々30

文・藤原正彦(作家・数学者) 1年半のコロナ禍を経て、人に会えないことがいかに辛いか、人と会って話すことこそが元気の源であることを思い知った者は多くいるだろう。私なども、長きにわたって築いてきた内密親密濃密な関係の女性達と、ソーシャル・ディスタンス保持不能のため、1年半も会えずすっかり参っている。もう私のことなどすっかり忘れているかも知れない、と考えると目の前が真っ暗になる。 子供や孫と会うのさえ最小限に抑えてきたが、私達夫婦がワクチン接種を終えたこの夏、藤原家全員集合を

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藤原正彦 そして何より言葉 古風堂々29

文・藤原正彦(作家・数学者) アメリカにいた頃、数学科だけでなく他学科を教えることもあった。ビジネス専攻1年生を担当したこともある。皆のいやがる授業だったが、同僚の一人が「秘書になりたい可愛い娘がいっぱいいる」、と言ったので即座に引き受けたのだ。その通りだったが、1/2+1/3を計算できない者がいたのには閉口した。 そんな学生でも、地図上で日本とフィリピンを間違えるようなハイティーンの小娘でも、議論になると滅法強い。筋道を立てて話すし、相手の弱点をつくのも巧い。私が何かユ

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藤原正彦 揉み手して 古風堂々28

文・藤原正彦(作家・数学者) 新型コロナに対する国産ワクチンはなく、政府の不手際で輸入もままならぬため、感染者数は激増し第5波に突入した。無理を通して開いた東京オリンピックも無観客という未曽有の事態となった。テレビ観戦では外国でやっているのと変らない。知人の医学部教授でアメリカ帰りの男が数年前に言った言葉を思い出した。「手術の巧さは日本の方が上だが、薬はアメリカに負けている」。日本人の手術の巧さはアメリカで通った床屋や歯医者の指先の頼りなさから想像できたが、製薬で負けている

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