文藝春秋digital

適切な距離|川上弘美

適切な距離|川上弘美

文・川上弘美(小説家) 最近、母と仲がいい。 実は、40年ほど前に実家から独立して以来、母とはあきらかに一定の距離があり続けていた。心理的にも、物理的にもだ。子どもが親から離れるのはごく健康的なことなので、距離があること自体は寿ぐべきことだが、磁石の同じ極が近づくと反発するように、どうやらわたしと母は、ある距離以内に近づくと、自然に反発して思いもよらぬ速さで互いから離れる、といった関係にあったようなのだ。 そのように距離をとらなければだめな間柄とは、つまり「不仲」なのか

スキ
25