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俳句|星野いのり

俳句|星野いのり

疼痛蔦青し旧姓に押す訂正印 捨てらるる音あかるしやラムネ瓶 右肩に義手の重さよ雲の峰 白玉や遅刻の人にまた話し 古書店の長居に麦茶出されをり コンビニの弁当浅き溽暑かな 疼痛や向日葵畑枯れ始む

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詩ーー十田撓子【全文公開】

詩ーー十田撓子【全文公開】

静かな木かれは眠っている 坐ったまま眠っている 喉を締め上げられて 漆を少しずつ流し込まれて かれは眠りながら声を失っていた 夏が終わる また夏が来る 雉の鳴く声と雨粒が葉を打つ音を聴きながら 廃寺の隅にじっとして かれはやはり眠っている 長大な体躯に刺青のような 黒く深い裂けめ これほど傷ついたものでなければ美しくなかった 齢五百あまり 伐り倒されなかったけやきのなかで かれは眠っている 【編集部よりお知らせ】 文藝春秋は、皆さんの投稿を募集しています。

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