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不思議な糸に導かれ|藤原正彦「古風堂々」

不思議な糸に導かれ|藤原正彦「古風堂々」

文・藤原正彦(作家・数学者) 小学校4年生の春、新しい図画工作の先生が着任した。強い天然パーマとギョロ目が特徴の、やせて颯爽とした27歳の美青年だった。3年生以上がこの先生に習うのだが、瞬く間に学校一の人気者となった。母親譲りの不器用で図工の成績はいつも5段階の2という私でさえ、週に1度、2階建て木造校舎の1階西端にあった図画工作室へ向かうのが楽しみだった。 話が抜群に面白かった。十八番は二等兵物語だった。終戦直前にしばらく陸軍にいた先生の、ユーモアたっぷりの語り口に私達

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蓋棺録<他界した偉大な人々>

蓋棺録<他界した偉大な人々>

偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム。 ★なかにし礼 作詞家で作家のなかにし礼(れい)(本名・中西禮三)はレコード大賞受賞曲を3度作詞し、小説でも読者を魅了した。 新婚旅行で下田のホテルに泊まったときロビーにいた石原裕次郎に声を掛けられる。「新婚の品定めをしていたけど、君たちが一番恰好よかった。君何しているの」。シャンソンの訳詞と答えると「それより流行り歌を書きなよ」。 1938(昭和13)年、満洲の牡丹江市で生まれる。父は酒造業を営み、ホテルや

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