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連載小説「李王家の縁談」#16 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#16 |林真理子

【前号まで】 昭和十二年(一九三七)からの戦争は、終わるどころかますます激しくなっている。それでも人々は日本の勝利を疑わなかった。迎えた昭和二十年五月二十四日。けたたましいサイレンがB29の襲来を報せたその晩、伊都子が暮らした気品溢るる七百坪もの梨本宮邸は、戦火にのまれていったのだった。 ★前回の話を読む。

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連載小説「李王家の縁談」#15 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#15 |林真理子

【前号まで】 昭和八年(一九三三)十二月二十三日、東京にサイレンが鳴り響く。天皇家に世継ぎが生まれたのである。待望の男児誕生に日本中が万歳三唱の声を合わせた。歓喜に身を浴しながらも、かつて娘を朝鮮の王世子のもとへ嫁がせた梨本宮伊都子妃は、朝鮮、中国と日本との関係悪化の報道に触れ、戦局を案じていた。 ★前回の話を読む。

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連載小説「李王家の縁談」#14 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#14 |林真理子

【前号まで】 昭和六年(一九三一)十二月。梨本宮伊都子妃の娘方子のもとに男の子が生まれた。方子とその夫李垠は彼を玖と名付け、「二十九代の李王家の王」の誕生を心底喜んだ。翌年、方子の義妹徳恵のもとに女の子が生まれる。よろこびごとの続く伊都子の心に、精神病を患う徳恵だけが影を落としていた。 ★前回の話を読む。

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連載小説「李王家の縁談」#13 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#13 |林真理子

【前号まで】 昭和六年(一九三一)。梨本宮伊都子妃の娘方子の夫である李垠には徳恵という妹がいた。母親の死に心を病み、「早発性痴呆症」と診断された徳恵だったが、美しく誠実と名高い宗武志と結婚。新居への引っ越しも済ませ、順調な新婚生活を送るかに思えた。しかし、再び奇行を見せるようになってしまう―― ★前回の話を読む。  新婚旅行ともいえる対馬への訪問で、徳恵(トケ)は異常な行動をみせた。  新婚の夫が懐かしい人々と歓談している最中に、突然やってきて、ずっと笑い続けていたとい

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連載小説「李王家の縁談」#12 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#12 |林真理子

【前号まで】 昭和五年(一九三〇)。佐賀藩主の鍋島家から梨本宮家に嫁いだ伊都子妃には娘が二人いた。長女方子は夫李垠と目を見張るような邸宅を建て移り住み、次女規子のもとには愛らしい赤ん坊が生まれた。喜びごとが続く中、今度は李垠の妹徳恵のもとへ縁談が舞い込む。曰く、「どんな娘でも心奪われる男」― ★前回の話を読む。

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連載小説「李王家の縁談」#11 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#11 |林真理子

【前号まで】 昭和三年(一九二八)。佐賀藩主の鍋島家から梨本宮家に嫁いだ伊都子妃には二人の娘がいた。伊都子は娘の縁談のため奔走し、それぞれ朝鮮の王族李王家と公家である広橋家へ嫁がせたが、姪の節子が秩父宮殿下の妃に選ばれたことを知り、心穏やかではいられないのであった。 ★前回の話を読む。  昭和四年、五年と続く年は、伊都子(いつこ)にとって喜びごとが多かった。  何よりも嬉しいことは、広橋伯爵に嫁いだ規子(のりこ)に、女の子が生まれたのである。父親そっくりの、大きな目をし

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連載小説「李王家の縁談」#10 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#10 |林真理子

【前号まで】 韓国併合から18年経った昭和3年(1928)。佐賀藩主の鍋島家から嫁いだ梨本宮伊都子妃には娘が二人いた。姉の方子は、李王家の王世子、李垠に、次女の規子は山階宮との縁談が破談になり、広橋伯爵に嫁ぐ。そして王世子の妹である李徳恵が日本に留学し、方子の家に迎えられた。 ★前回の話を読む。  昭和の御代になって二度めの、昭和三年の正月も静かに過ぎようとしていた。  十一月の即位の礼を控え、宮中での拝賀の儀は規模を小さくして行なわれた。  が、天皇皇后両陛下は機嫌

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連載小説「李王家の縁談」#9 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#9 |林真理子

【前号まで】 韓国併合から十六年経った大正十五年(一九二六)。佐賀藩主の鍋島家から嫁いだ梨本宮伊都子妃には娘が二人いた。長女の方子は、韓国併合後に皇室に準ずる待遇を受けていた李王家の王世子、李垠に嫁ぐ。続いて次女、規子の婚姻に伊都子は奔走する。が、山階宮武彦王の縁談は流れてしまう。 ★前回の話を読む。  梨本宮家の次女、規子(のりこ)女王と広橋真光(ただみつ)伯爵との婚儀は、大正十五年十二月二日にとり行なわれた。  山階宮家から破談を言い渡されたのが七月であったから、わ

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連載小説「李王家の縁談」#8 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#8 |林真理子

【前号まで】 韓国併合から十年経った大正九年(一九二〇)。佐賀藩主の鍋島家から嫁いだ梨本宮伊都子妃には、方子という娘がいた。伊都子妃は奔走の末、韓国併合後に皇室に準ずる待遇を受けていた李王家の王世子、李垠と方子の婚姻にこぎつける。ところが第一子の晋は訪問先の朝鮮で亡くなる。 ★前回の話を読む。  大地震によって、首都は壊滅したと言われたが、それでも日にちがたつうちに、少しずつ復興の兆しが見え始めた。一週間後には汽車も通るようになり、宮内省から物資が届けられた。  伊都子

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連載小説「李王家の縁談」#7 |林真理子

連載小説「李王家の縁談」#7 |林真理子

【前号まで】 韓国併合から十一年経った大正十年(一九二一)。佐賀藩主の鍋島家から嫁いだ梨本宮伊都子妃には、方子という娘がいた。伊都子妃は奔走の末、韓国併合後に皇室に準ずる待遇を受けていた李王家の王世子、李垠と方子の婚約にこぎつけた。そして、一年の結婚の延期を経て方子は懐妊する。 ★前回の話を読む。  大正十年は、伊都子(いつこ)にとって大きな不幸と大きな幸せが訪れた年であった。  六月十八日に、鍋島の父、直大(なおひろ)が七十六歳の生涯を終えたのである。  最後の藩主

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