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#映画

西川美和 ハコウマに乗って⑫

そういうもの?この仕事につく以前、私には映画関係の知り合いは1人もなかった。映画や写真や音楽にのめり込んでいた大学時代の仲間も、4年生になると出版社や鉄道会社や商社に就職を決めていったが、私は1人「映画の仕事をしてみたい」と青臭い夢に浸りつつ働き口を探していた。 そんな折、故郷の父が通う床屋の息子が映画会社で撮影助手をしているという話を聞いた。クラスの中でも物静かだったO君が、大きなキャメラを担いで撮影現場に立っているとは意外だった。床屋には巨匠キャメラマンの傍らに立つO君

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スターは楽し 松田優作|芝山幹郎

松田優作 静かな美貌と鬼の気配松田優作が出ていなかったら、『ブラック・レイン』(1989)は、これほど記憶に残る映画にはならなかったはずだ。 冷静になって見直すとやや荒っぽいところもある映画だが、89年10月の劇場試写で見たときはどきりとした。 松田優作の演じるサトーが、鬼気迫る演技を見せていたからだ。オーバーアクトすれすれと感じた人はいるかもしれないが、私は納得した。そうか、このやり方でアメリカ映画と勝負したのか。 サトーは、やくざや犯罪者といった類型を大きくは

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高倉健 「千葉、女は怖いぞ~」 千葉真一 100周年記念企画「100年の100人」

日本映画史に残る名優、高倉健(1931~2014)。東映ニューフェイスの後輩の千葉真一氏(1939~2021)が生前、記者の取材に知られざる交流秘話を明かしていた。/文・千葉真一(俳優) 千葉さん 「千葉。それはな、しょうがねえんだ。あきらめちまえ」 僕は人間ができてないですから、たまに愚痴を言うことがあるでしょ。長々と僕がしゃべっているときに健さんは腕組みをしながらじっと黙って聞いて、しばらく間があった後、そう言葉をかけてくれるんです。 余計な言葉はいわなくても、短

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小津安二郎 上質なユーモア 中井貴惠 100周年記念企画「100年の100人」

日本を代表する映画監督、小津安二郎(1903~1963)。俳優、中井貴惠氏がその素顔を綴る。/文・中井貴惠(俳優・エッセイスト) 中井さん 小津監督は父(佐田啓二)と母の仲人である。この2人の間に長女として誕生した私を監督はとても可愛がってくださった。お酒を召し上がるとたいていご自宅には帰らず我が家にお泊まりになった。宴席では当時はやっていたスーダラ節を必ず一緒に歌い踊ったものだった。ロケ帰りの監督をお迎えに行けば美味しいものを名店でごちそうになり、生まれてからたった6年

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三船敏郎 真っ赤になった三十郎 黒澤和子 100周年記念企画「100年の100人」

「世界のミフネ」こと三船敏郎(1920~1997)。彼が世界的名声を得たのは、巨匠黒澤明監督とのコンビ作だ。黒澤監督の長女、和子氏はスターではない「素顔のミフネ」に接していたという。文・黒澤和子(衣装デザイナー) 幼い頃の思い出として覚えているのは、黒澤組恒例の宴会で、三船敏郎さんや加山雄三さんが寸劇をしたり、スタッフ全員で輪唱をしたりといった風景です。 酔っ払いが鴨居にぶら下がり、ミーンミーンと鳴いていたり、家の池に飛び込んだりしているのが何処の家でも当たり前なのだと思

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松田優作 深夜3時の別れ 國村隼 100周年記念企画「100年の100人」

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スターは楽し ティルダ・スウィントン|芝山幹郎

ティルダ・スウィントン ©UPI=共同 100の顔を持つ魔物30年ほど前のことになる。ロンドンのナイツブリッジにある小さな映画館で、私は『オルランド』(1992)を見た。ケンジントン・ロードをはさんで反対側にあった〈真珠飯店〉という小綺麗な中華料理屋は覚えているが、映画館の名があやふやだ。もしかすると、〈インペリアル・シネマ〉だったかもしれない。 そこで見た『オルランド』が記憶に残りつづけている。映画の主人公は400年の時空を超えて生きる。16世紀の英国に生まれたハン

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「日本沈没」小松左京の遺言 太田啓之

SF界の巨匠が描いた「憂国の魂」は、現在も受け継がれている。/文・太田啓之(朝日新聞記者) 高度成長の終焉を予言生誕90年、没後10年を迎えたSF作家・小松左京が今なお熱い。昨年には、新型感染症のパンデミックで人類が滅亡する危機を描いた長編SF「復活の日」(1964年)が「コロナ禍を予言した」と注目を集め、ネットフリックスで「日本沈没」がアニメーション化された。そして現在は、TBSが小栗旬、松山ケンイチ、香川照之らの豪華キャストで「日本沈没―希望のひと―」を放映中だ。こちら

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スターは楽し デボラ・カー|芝山幹郎

デボラ・カー ©Ronald Grant Archive/Mary Evans/共同通信イメージズ 退屈さを勝負技に変える 若いころ、私はデボラ・カーを冷たい眼で見ていた。最初に見たのが、『悲しみよこんにちは』(1958)だったことも一因だろうか。美貌の誉れ高い女優だが、このときは相手役が(というか、敵役が)ジーン・セバーグだった。 これはちょっと分が悪い。この映画の少しあとに『勝手にしやがれ』(1960)に主演したことからもわかるとおり、当時のセバーグは「とんがった

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香川1区で日本の政治を撮る 大島新

文・大島新(ドキュメンタリー監督) 現在、立憲民主党に所属する衆議院議員の小川淳也氏を17年間にわたり取材した映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』は、2020年6月に公開すると予想もしなかった大きな反響を呼び、キネマ旬報ベスト・テン文化映画第1位を受賞した。私は今、その続編に当たるドキュメンタリー映画『香川1区』の撮影の真っただ中にいる。 企画のきっかけは、2020年9月の菅義偉政権の誕生によって、小川の対抗馬である自民党の平井卓也議員がデジタル改革担当大臣に就任したこ

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スターは楽し 千葉真一|芝山幹郎

千葉真一 お茶目な火炎放射器千葉真一を飛行機のなかで見かけたことがある。1990年代の初めごろだったか、バハ・カリフォルニアのロスカボス空港からロサンジェルス行きのアラスカ航空機に乗り込んだところ、機体前部の6席しかないファーストクラスのひとつに、サニー・チバが腰を下ろしていたのだ。おや、という表情を私が浮かべたせいか、千葉真一は眼もとをちょっとゆるめてくれた。それだけの話だが、なぜか記憶に残っている。 いまにして思うと、千葉真一は当時50代前半で、すでに活動の拠点を

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西川美和 ハコウマに乗って⑧|スウィングきらり

スウィングきらりなんにせよスポーツについて考える機会の多い夏だったが、私は先日、野球選手を目指す小学6年生という設定で、一人の少女をテレビCMに起用した。 同級生が中学受験に備えて塾に通ったり夜遅くまで勉強するのをよそに、プロを目指してひたすら練習している。父親は娘の夢を応援しつつ、現実は甘くないと内心葛藤している——父が放り上げる球を、少女のバットが鋭くミートする場面を書いた。これをごまかしなしにやれるのは、野球経験のある子しかいない。 けれど子役のオーディションは骨が

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スターは楽し ケヴィン・コスナー|芝山幹郎

ケヴィン・コスナー WEISSMAN, ALAN/Album/共同通信イメージズ エゴを消したサバイバルあのころ、ケヴィン・コスナーの人気は爆発的だった。「ゲイリー・クーパーの再来」と呼ばれ、映画スターの枠を超えたカルチャー・ヒーローと目されることさえあった。1980年代の終わりから90年ごろにかけての話だ。 人気が頂点に達したのは、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)に主演し、監督も兼ねたときだった。これはスー族の集団に身を投じた北軍中尉の物語だ。封切直後、私

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みうらじゅん『ゴジラvsコング』に釘付け!!

文・みうらじゅん(イラストレーターなど) 先づは自己紹介の口上から。“ワタクシ、生れも育ちも東宝怪獣映画です。小一で『三大怪獣』にずっぽりハマり、姓はみうら、名はじゅん。人呼んでカイジュウのじゅんと発します” で、現在、63歳。シルバー料金の恩恵に与かり、先日『ゴジラvsコング』を観て参りました。コロナ禍での延期上映だったので期待は高まるばかり。いつもならプラッと映画館に出掛け、その場でチケットを買うのですが、今回は前日にケータイから予約する方法を初めて知人に教わり、余裕

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