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片山杜秀さんの「今月の必読書」…『デヴィッド・ボウイ 無(ナシング)を歌った男』

片山杜秀さんの「今月の必読書」…『デヴィッド・ボウイ 無(ナシング)を歌った男』

孤独な少年の、帰る先なき、上昇と下降の永劫の循環運動男の子は宇宙に飛翔する。1人乗りの屹立したロケットで。フロイト主義で簡単に解釈できる、男の子の欲望の1960年代的かたちだ。61年にガガーリンが1人乗りのボストーク1号で宇宙に行き、69年には3人乗りだけれどアポロ11号が月面に到達した。 日本ではその時代に『ぼくのクレヨン』という童謡も生まれたっけ。「おひさまはあか、そらはあお」。そんな日に鼠色のロケットが発射される。乗り組むのは「ぼく」ひとり。「てをふるママはたちまちま

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【作詞家50年】松本隆「僕が出会った天才作曲家たち」 筒美京平、松任谷由実、大瀧詠一 、細野晴臣……

【作詞家50年】松本隆「僕が出会った天才作曲家たち」 筒美京平、松任谷由実、大瀧詠一 、細野晴臣……

「僕のまわりには昔から天才が集まってくる」/松本隆(作詞家) <summary> ▶︎僕らは、「日本の音楽を変える」と予告して、そのとおりのホームランを打った。アンチの人がなにを言おうと、「君たち、僕らの風呂敷の上に乗っているよ」と言いたい ▶︎細野さんが生まれついての天才だとしたら、大瀧さんは努力の天才 ▶︎50年前、いまのようになっている自分はまったく想像できなかった。ちょっと出来すぎなんじゃないかなと思います 松本氏 日本語でロックを歌う 「はっぴいえんど」がデ

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武田徹の新書時評|音楽と社会のあり方を考える

武田徹の新書時評|音楽と社会のあり方を考える

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。 2020年はベートーヴェン生誕250年に当たり、新書でも関連書が揃った。 中野雄『ベートーヴェン』(文春新書)は罵声と殴打で息子を鍛えた父など家族の紹介から始まり、名曲『英雄』『運命』も初演では失敗続きだった天才音楽家の多難な人生を辿る。モーツァルトとのニアミスや聴覚障害についてのエピソードも興味深い。 浦久俊彦『ベートーヴェンと日本人』(新潮新書)は日本独特のベートーヴェン受容がテーマだ。音楽取調所

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コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 詐術としての音楽小説|片山杜秀

コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 詐術としての音楽小説|片山杜秀

音楽は時間だ。音楽を味わうには時の推移を記憶せねばならない。3分のポップ・ソングなら、うまく最初から覚えて最後まで聴き通せるかもしれない。しかしマーラーやブルックナーの1時間以上掛かる交響曲だとどうか。30分聴いたところで最初の1分を思い出せるか。至難の業だ。たいてい混乱する。忘却している。記憶の捏造も容易に起こる。聴いたのと違う旋律を覚えたつもりで口ずさんだりする。したがって上手な音楽小説とは、音楽をネタに用いつつ、記憶の関節を外し、夢とうつつ、生者と死者、本物と贋物の区別

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