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梯久美子さんの「今月の必読書」…『ルポ入管 絶望の外国人収容施設』

隠されてきた非人間的な長期収容の実態 長崎県の大村入国管理センターで餓死者が出たのは2019年6月のことだ。亡くなったのはナイジェリア人の男性で、長期収容に抗議するハンストの末の死だった。 本書を読んで、この報道に接したときに受けた衝撃を思い出すとともに、背景にある日本の入管収容制度…

コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 新しい読書のしかた|梯久美子

昨年秋に移り住んだ札幌では新型コロナの感染拡大が一足早く始まり、長いステイホーム期間を過ごすことになった。これから取材するテーマに関する本など読むべきものはたくさんあったが、いざ時間ができると手が伸びない。何を読んでいたかと言うと、もっぱら旅行記である。 河口慧海『チベット旅行記…

梯久美子さんの「今月の必読書」…『帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーから…

軍人は互いをかばいあう高級官僚にほかならない 大和ミュージアム(呉市)館長の戸髙一成氏と、昨年話題を呼んだベストセラー『独ソ戦』の著者である大木毅氏による対談本である。 昭和50年代から6十年代にかけて、旧軍人――将官、佐官クラスだった人たちがまだ存命だった――からじかに話を聞いた…

【全文公開】普遍性を持つ戦争の記録 梯久美子さんの「わたしのベスト3」

ノンフィクション作家の梯久美子さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。  時代が移っても継承すべきもののひとつに、先の戦争の記憶がある。きわめて私的な視点から戦争を描きつつ、ある普遍性を獲得している作品を選んだ。 『望郷と海』は、関東軍のハルビン特務機関に配属され、戦後、8…

梯久美子さんの「今月の必読書」…『熱源』

読み手の心に静かな熱を生む  あのブロニスワフ・ピウスツキを描く小説があらわれたとは! 本書の刊行を知ったとき、驚きと期待、そして、正直に言えばいくばくかの不安が心の中でせめぎあった。ブロニスワフは実在の人物で、帝政ロシア末期の1887年に皇帝暗殺未遂事件に連座し、政治犯としてサハリ…