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文藝春秋digital

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#梯久美子

『文藝春秋digital』2022年6月ラインナップ

■会員限定イベント●6月8日(水) ・新庄剛志「薬物使用」の過去 抜き打ち検査で「陽性」も、詳細は伏せられ、その年に引退―― 鷲田康(ジャーナリスト)+本誌取材班 ●6月10日(金) ・プーチンが最も殺したい男の告白 M・ホドルコフスキー(オリガルヒ・石油会社「ユコス」元代表)「ウクライナ侵攻は彼の個人的な動機から始まった」 ・「性暴力」私は負けなかった 卜田素代香(仮名)「暴行後『証拠が残るからシャワーを』と男が強いてきました」 ・新連載 外事警察秘録②「日本赤軍との闘い

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広瀬友紀「子どもに学ぶ言葉の認知科学」言語って何だ? 評者・梯久美子

言語って何だ?「これ食べたら死む?」 「ほんとうに死まない?」 子供や孫がこんな言い方をするのを聞いたことのある人は多いだろう。幼児によくある言い間違いである。 私たちは、子供は大人が話すのを聞くことで言葉を身につけていくと考えがちだ。だが、大人がこうした言い方をすることはまずない。それなのに、多くの子供が同じ間違いをするのはなぜか。そんな話から本書は始まる。 実は子供は、大人が使っている言葉を模倣することによってのみ言葉を覚えるわけではない。こうした間違いは、幼児が

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梯久美子 池田武邦さんと軽巡洋艦「矢矧」

文・梯久美子(ノンフィクション作家) 新幹線で東京から関西方面に向かうと、名古屋の少し前で線路は矢作川を渡る。川岸に立つ河川名の表示板が目に入り、この5月に98歳で亡くなった建築家の池田武邦氏のことを思った。 池田氏は海軍兵学校72期で、卒業後は少尉候補生として軽巡洋艦「矢矧(やはぎ)」に着任した。軽巡洋艦は川の名から命名されるのが通例で、「矢矧」という艦名は矢作(矢矧)川に由来している。 私が取材をきっかけに池田氏と親交を得たのは13年前のことだ。以来、氏が万感の思い

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梯久美子 川端文学の救い「少年」(川端康成)

川端文学の“救い”川端康成がガス自殺で命を絶って50年の今春、これまで全集でしか読むことのできなかった『少年』が文庫化されて話題になっている。 この小説を、版元のホームページは「幻のBL作品」としている。BLとはボーイズ・ラブの略で、帯にも「少年愛」の文字が躍る。それは、中学校(旧制)時代、寄宿舎で同室だった清野という下級生との、こんな描写が頻出するためだろう。 〈床に入って、清野の温い腕を取り、胸を抱き、うなじを擁する。清野も夢現《ゆめうつつ》のように私の頸を強く抱いて

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梯久美子さんの「今月の必読書」…『もういちど、あなたと食べたい』筒井ともみ

“食”を通じて人を見つめる映画『それから』や『阿修羅のごとく』、テレビドラマ『家族ゲーム』、『センセイの鞄』などで知られる脚本家・筒井ともみが、忘れられない人々を、「食」をめぐるエピソードを軸に回想したエッセイである。 登場するのは、加藤治子、松田優作、深作欣二、北林谷栄、久世光彦、和田勉、岸田今日子、藤田敏八、向田邦子、樹木希林……といった錚々たる顔ぶれ。芸能界だけでなく、佐野洋子、須賀敦子、松本清張などの作家との縁も描かれる。 向田邦子をはじめ、脚本家にはエッセイの名

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100年後まで読み継ぎたい100冊 梯久美子「無数の声を歴史に刻む」

文・梯久美子(ノンフィクション作家) 無数の声を歴史に刻む選書したあとで気づいたのは、これらがみな、歴史の証言であると同時に、すぐれた文学でもある作品だということだ。 1948年にウクライナで生まれたアレクシエーヴィチは、ジャーナリストでありながらノーベル文学賞を受賞した書き手である。『戦争は女の顔をしていない』は彼女の第1作で、第2次大戦でソ連軍の一員として戦った女性たちへの聞き書きだ。話を聞いた従軍女性は500人をこえるという。彼女たちの1人称の語りを中心に、インタビ

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梯久美子さんの「今月の必読書」…『歴史のダイヤグラム 鉄道に見る日本近現代史』

列車と日本史の交差点鉄道は、歴史の地層の上を走っている——原武史さんの書くものを読むと、いつもそう実感する。 地面の上を水平方向に走る鉄道だが、政治思想史が専門で「鉄学者」としても知られる原さんの手にかかると、垂直方向に過去へとさかのぼる旅にいざなわれる。 本書は、鉄道にかかわるさまざまなトピックから、近現代史を浮かび上がらせたコラム集。朝日新聞の土曜別刷り「be」に同タイトルで現在も続いている連載の、今年5月までの分をまとめたものだ。 連載が始まって間もない2019年

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梯久美子さんの「今月の必読書」…『岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』

まるで自分自身を題材としたルポルタージュたった数行で、人や風景をあざやかに立ち上がらせる、喚起力のある描写。歯切れのいい文章。最初の章を読み始めてすぐ、ああそうだった、と私は思った。誰もが知るあの美貌と、女優としてのキャリアに惑わされてはいけない。この人は、「ベラルーシの林檎」「砂の界(くに)へ」を書いた、世に稀な文章家なのだ、と。 本書の著者がかつて刊行したこの2作を読んだとき、こんな本があったのか! と衝撃を受けた。舞台はパレスチナ、バルト三国、戦時下のイラン……。エッ

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十八歳にして田辺聖子はすでに田辺聖子だった|梯久美子【田辺聖子「十八歳の日の記録」】

田辺聖子さんの「十八歳の日の記録」をノンフィクション作家の梯久美子氏はどのように読んだのか。 梯さん お嬢様学校に在学していた田辺聖子 昭和20年4月、数え18歳の田辺聖子は、航空機のボルトとナットを作りながら、せっせと小説を書いていた。 彼女が暮らしていたのは、伊丹線の稲野駅に近い郡是塚口工場の寮である。もともとは絹靴下を作っていたこの工場は、戦時中、飛行機部品工場となっていた。そこに、田辺が在学していた樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大学)国文科の生徒が動員された

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梯久美子さんの「今月の必読書」…『ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚』

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梯久美子さんの「今月の必読書」…『ルポ入管 絶望の外国人収容施設』

隠されてきた非人間的な長期収容の実態長崎県の大村入国管理センターで餓死者が出たのは2019年6月のことだ。亡くなったのはナイジェリア人の男性で、長期収容に抗議するハンストの末の死だった。 本書を読んで、この報道に接したときに受けた衝撃を思い出すとともに、背景にある日本の入管収容制度について、自分があまりにも無知、無関心だったことを思い知った。 亡くなった男性は、3年半以上にわたって収容されていた。入管(法務省出入国在留管理庁)が管理するこうした外国人収容施設は本来、在留資

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コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 新しい読書のしかた|梯久美子

昨年秋に移り住んだ札幌では新型コロナの感染拡大が一足早く始まり、長いステイホーム期間を過ごすことになった。これから取材するテーマに関する本など読むべきものはたくさんあったが、いざ時間ができると手が伸びない。何を読んでいたかと言うと、もっぱら旅行記である。 河口慧海『チベット旅行記』は、漢訳の仏典に満足できず、1897年、原典を求めてチベットに旅立った僧侶・慧海による旅行記(というより探検記)だ。当時のチベットは鎖国中で、慧海は徒歩でヒマラヤを越え、密入国を果たす。首都ラサで

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梯久美子さんの「今月の必読書」…『帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる』

軍人は互いをかばいあう高級官僚にほかならない大和ミュージアム(呉市)館長の戸髙一成氏と、昨年話題を呼んだベストセラー『独ソ戦』の著者である大木毅氏による対談本である。 昭和50年代から6十年代にかけて、旧軍人――将官、佐官クラスだった人たちがまだ存命だった――からじかに話を聞いた経験を持つ2人が、帝国軍人とはいったい何だったのかを、具体的なエピソードや史料をもとに縦横に語る。 日本海軍史研究家であり、海軍反省会(元大佐、中佐クラスの人物が中心となり、敗戦に至った経緯や問題

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【全文公開】普遍性を持つ戦争の記録 梯久美子さんの「わたしのベスト3」

ノンフィクション作家の梯久美子さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。  時代が移っても継承すべきもののひとつに、先の戦争の記憶がある。きわめて私的な視点から戦争を描きつつ、ある普遍性を獲得している作品を選んだ。 『望郷と海』は、関東軍のハルビン特務機関に配属され、戦後、8年間にわたってシベリアに抑留された詩人・石原吉郎の評論集。収録作の「ペシミストの勇気について」で石原がペシミストと呼ぶのは、同じ収容所にいた鹿野武一という男である。  あるとき鹿野は絶食を始め

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