文藝春秋digital

夜啼き鳥の歌|小野正嗣

夜啼き鳥の歌|小野正嗣

文・小野正嗣(小説家・仏文研究者) Kさんが亡くなってから6年になる。七回忌か。でも彼は日本の人ではなかった。 2005年の春、足かけ8年のフランス留学を終えて帰国した。そのうちの5年ほどは、パリから南に列車で1時間のオルレアンに暮らすエレーヌとクロードの夫妻の家での居候生活だった。 3階にある僕の部屋からは大きな中庭が見渡せた。フランスを発つ前日の早朝、開けた窓から薄闇を貫いて夜啼き鳥の声が聞こえてきた。驚きのあまり立ち尽くした。その美しい歌を耳にするのは初めてではな

スキ
11
フランスのジェンダー・ギャップ|雨宮塔子

フランスのジェンダー・ギャップ|雨宮塔子

文・雨宮塔子(フリーキャスター) 先日、息子の生活指導の先生に会ってきた。息子はフランスの高校1年生。遅刻することが多く、点呼に間に合わないので欠席扱いになったり、先生によっては遅刻者は教室にさえ入れてもらえないため、必然的に欠席となる。届けのない欠席日数が多すぎると、面談の要請があったのだ。 息子の欠席扱いは、とくに昨年の12月に集中していた。私が年末の報道番組に出演するため、1カ月近く単身帰国していた時期だ。年末恒例のこの番組は6時間半に亘る生放送なのだけれど、事前に

スキ
47
緩やかすぎるロックダウン|辻仁成

緩やかすぎるロックダウン|辻仁成

文・辻仁成(作家) この原稿を書いている11月現在、フランスは、春に続く2度目のロックダウンの最中である。一応、12月1日までとなっているが、1日の感染者数が数万人に達しているので、多分、延長されるのではないか、と市民は戦々恐々としている。一方、完全ロックダウンとはいえ、第一次に比べるとかなり緊張感のない緩いものになっている。カフェやレストラン、商店が営業停止状態にあるものの、一歩外出すれば、通りに緊迫感は無く、人々は外出許可証(消しゴムで消せば自由に書き換えられ、何度も外

スキ
14
「今は我慢。経済は戦後復興で取り返す」フランスのコロナ対策から日本が学べること

「今は我慢。経済は戦後復興で取り返す」フランスのコロナ対策から日本が学べること

欧州でどこよりも早く2度目のロックダウンに踏み切ったフランス。その決断の裏にある“思想”とは何だったのか——。フランス在住40年超のジャーナリスト・広岡裕児氏が読み解きます。 <この記事のポイント> ▶︎フランスでは、内政の責任者は首相。従って、マクロン大統領がコロナ陽性になっても国民の大半は“無関心”だった ▶︎フランスが2度目のロックダウンに踏み切った理由は「クリスマス商戦を助けるため」 ▶︎マクロン大統領は、新型コロナとの戦いを「保健衛生戦争」であると位置付けている

スキ
9
明るくて広い部屋|青山七恵

明るくて広い部屋|青山七恵

文・青山七恵(作家) 夏に引っ越すことにした。11年ぶりの引っ越しだ。今度の部屋はいまの部屋よりずいぶん広い。友人に間取り図を見せると、ひとりで住むには広すぎるという。さびしくなるかもよという。でも、いまよりもっと狭い部屋に住んでいたとき、いまよりわたしはさびしくなかったかというと、そんなことはない。さびしいという気持ちが、ひとひとりが空間に占める割りあいに関係してくるというならば、棺桶のなかがいちばんさびしくないということになる。 これまでに暮らした住居でいちばん広かっ

スキ
7
静かな生活|原田マハ

静かな生活|原田マハ

文・原田マハ(作家) 5月11日、フランス全土に発出されていた「外出禁止令」が解除された。 3月、新型コロナウィルスの感染拡大の嵐が世界中に吹き荒れた結果、フランスのみならず、各国が都市封鎖=ロックダウンに踏み切ってからほぼ2ヶ月。フランスに先立って、ヨーロッパで最も深刻なコロナ禍に見舞われたイタリアも、5月4日に外出規制緩和となった。スイス、オーストリア、ドイツ、スペイン……政府の号令一下、ドアを閉めて家の中に引きこもっていた人々は、ようやく施錠が解かれてほっと一息つい

スキ
11
新天皇・雅子皇后の素顔「陛下のフランス愛」

新天皇・雅子皇后の素顔「陛下のフランス愛」

陛下はお酒、雅子さまは生き物が大好き。ご出産秘話から御所の中の私生活まで……新天皇・皇后おふたりに接した人々が素顔を明かす。 文・オリビエ・メレリオ(前日仏経済交流委員会会長代行)

スキ
1