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春の缶詰|朝吹真理子

春の缶詰|朝吹真理子

文・朝吹真理子(作家) 人間に会えない寂しさが募っているせいか、今年は、特に、花になぐさめられている。散歩をしながら、梅も、桜も、木蓮も、みつけると嬉しくなって、眺める。マスクをずっとしているからか花粉症がましな気がするが、気のせいかもしれない。いつもはソメイヨシノがたくさん咲いていると、花に人が取り憑かれているようにみえて不気味に思うのに、今年はじぶんも率先して春の花々に取り憑かれた。花は感染症もまるで関係ないように咲いて散るので安心する。家の前のソメイヨシノが咲き始める

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